電車に乗っていると、多くの人たちがニュースアプリを使ってニュースをチェックしているのを見かけます。30~40歳代の人だと、新聞を広げてニュースを読む光景は馴染みでしたが、両腕を広げなくても手のひらのなかでニュースが読めるようになりました。
また、ここ数年のうち、その手に握られているスマートフォンにも変化がありました。少し前は、SafariやGoogle Chromeといったスマートフォンのウェブブラウザを使ってニュースを読むのが常だったのですが、アプリを使ってニュースを読む人たちが増えてきたのです。2012年12月に「スマートニュース」が、翌年1月には「グノシー」が登場しました。本当、つい最近のことですね。2015年現在、前者は「ついに1000万ダウンロード突破!」、後者は「900万ダウンロードを突破」とうたい、破竹の勢いを強調しています。
これら2つのアプリのほか、Yahoo!ニュースアプリやLINE NEWSアプリ、NewsPicksアプリも含め、「誰がヤフトピを倒すのか?」「ダウンロード数はどのサービスが一番なのか?」といった商業上の競争とその勝者を追いかけるニュースが日々伝えられています。この動向に注目するのは、メディアやマーケティングの関係者らで、この競争を「ニュースアプリ戦争」と呼ぶ向きもあるようです。
もちろん、ビジネスとしてニュースアプリを展開する以上、商業上の成功は避けて通れないポイントですが、ダウンロード数だけでなく、「どのアプリが最も有益な情報を流しているのか?」という観点からはほとんど語られていないことも事実で、「ネットジャーナリズムの光と影」を語るうえで、無視できないポイントです。“ネットジャーナリズム”に何が起きているのか? 少しのぞいてみることにしましょう。
「ニュースを選ぶ側」から
「ニュースを作る側」になって見えたこと
私は、今、長く務めたヤフー・トピックスの編集責任者の座を退いて、THE PAGEというニュース解説サイトの運営をしています。それ自体は、普通のサラリーマンにある人事異動なのですが、ネットニュースにおいて果たす役割がまったく違うものになることは、はじめから意識をしていました。