2年前に示した中期経営計画の数値目標を1年前倒しで達成してみせたパナソニック。構造改革という長いトンネルを抜けた今、今後の成長戦略に注目が集まる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
パナソニックの復調が鮮明になってきた。2014年度の連結売上高(為替の影響を除いた実質ベース)は、前年度に比べ3%減の7兆7150億円だったものの、営業利益は同25%も増え3819億円だった。
今から2年前、津賀一宏社長が「売り(上げ)を追わない」としながら、「覚悟を持って達成する」として示した連結営業利益3500億円以上、営業利益率5%以上という中期経営計画の数値目標を、来年3月の期限を待たずに、1年前倒しで達成したことになる。
さらに、連結純利益は1795億円で、前年度比49%もの大幅増となった。
テレビ事業関連などの子会社で、保有株の評価損と事業損失に備えた引当金として、単独で1330億円の特別損失を計上しながらも、連結で純利益が大幅増となっているのは、過年度に連結で一部費用計上していたことに加えて、増益要因となる繰り延べ税金資産の積み増しが、14年度に1300億円もあったことが大きい。
繰り延べ税金資産の積み増しは、基本的に将来の収益見通しとリンクしている。1000億円を超える繰り税を積み増しているのは、将来の収益についてパナソニックとして強気に見通していることの表れだ。
経営の先行きを強気に見通すのは、着実に回復してきた、“稼ぐ力”への自信があるからだろう。それを象徴しているのが、フリーキャッシュフロー(FCF、純現金収支)だ。
FCFは、事業(営業)活動の収支と設備投資などによる収支を足し合わせたもので、企業が年間で生み出した自由に使うことができる金額の大きさを表している。
14年度のFCFは、3535億円。13年度は5940億円で、中計で示した「3年間の累計で6000億円以上」という目標を、すでに大幅に上回っている状態だ。
パナソニックの過去10年間を振り返ると、テレビを筆頭に収益変動の波が大きく、3年連続してFCFがプラスだったことは一度もなかった。
それだけに、金額もさることながら、15年度の見通しを含めると4年連続でプラスを維持することの意味は決して小さくない。