効率は高いとしても、「そのメイントレーナーが統制できるはずがない」というご意見を受けるが、実は統制できるのである。仮に統制できるとしても、「難易度の高いトレーニングができない」というご意見を受ける。

 実はこの点が、企業内トレーニングが役立っていると思われない元凶だ。難易度の高いトレーニングを実施しようとするから、統制ができないのである。日本の企業内トレーニングは、難しいことをさも難解に、複雑なことをさも複雑なように伝えがちであることに問題がある。

 まるで、そうすることで、トレーニングを実施する人事部門や教育部門の価値が上がると思っているかのごとく、一生懸命取り組めば取り組むほど、手を入れれば入れるほど、凝れば凝るほど、難解、複雑な研修プログラムが出来上がる。これが大きな間違いだ。

分解されたスキルの反復練習こそが
演習効果を高める

 トレーニングの成果を参加者に身に付けさせたいと思うならば、難解、複雑なものを解きほぐし、身に付けさせたいスキルを分解し、分解され単純化されたスキル向上の反復練習を行うように組むことが効果的だ。私は1プログラム2時間で6つのスキルに絞っている。

 例えば、プレゼンテーション能力を高めるプログラムは、(1)1対1の会話の際の視線の外し方の訓練、(2)1対多数のプレゼンテーションの場合の視線の動かし方、(3)視線に連動した体の動かし方、(4)体を動かしながら言葉を載せる方法、(5)体を動かしながら文節を区切る方法、(6)文節毎のつなぎの言葉を入れる方法――というように、身に付けるスキルを分解して、これらを反復練習するプログラムを組む。そうすることで、ほとんどのビジネスパーソンはその能力を高めることができるのである。

 複雑で難解なことを、さも難しそうに一方的に伝えて、いわば煙に巻き、参加者を呆れさせるトレーニングが、企業内トレーニングを行き詰らせているのだ。

 一方、「大人数で演習をすることでは、きめ細かな指導ができるはずがない」というご意見も常にいただく。もっともである。しかし、そもそも、きめ細かな「指導」を行わないので、大人数で演習することの弊害はない。

 そもそも能力開発をするにあたって、「指導をする」「何かを指図する」という発想を持ち続ける以上、日本の企業内トレーニングの発展は見込めない。能力開発の効果をあらたかにするためには、指導などしないことだ。参加者の自発的意思に訴え、自らの能動的な取り組みによって話法のロールプレイングや事例のディスカッションに参加してもらえるようにすべきなのだ。