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 金融庁の金融審議会は、銀行の業務範囲を拡大する方向で議論を開始した。日本の銀行の業務範囲は長い年月をかけて徐々に拡大されてきたが、リーマンショック後の環境でも、これ以上の業務範囲の拡大が本当に必要なのかについて、消費者利便性、預金者保護、そして金融立国の観点から検証してみたい。

銀行の業務範囲拡大は
世界的な規制強化の動きに逆行

 去る5月19日から金融審議会に「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」の議論が始まった。これは、銀行の業務範囲をさらに拡大することの是非を考える会合だ。

 米国では、大恐慌後の反省から厳格な銀行業務と証券業務の分離が行われていた。しかし、1999年に一定の要件を満たした銀行持株会社に、金融持株会社(Financial Holding Company)というステータスを与え、金融業務に付随する業務や補完する業務を行なうことができるようにした。また、欧州では伝統的に銀行の業務範囲の制限は緩かった。

 日本は、もともと米国型の規制を採用していたが、93年の金融制度改革法により、銀行の傘下に証券会社や信託銀行を置くことが認められた。さらに、98年からは銀行持株会社を設立してその傘下に銀行・証券会社・保険会社などを置くことが認められ、その結果、一部の大手証券会社等が銀行の持株会社の子会社になった。2008年には、銀行持株会社傘下の会社にさらなる業務の拡大が認められた。

 その結果、銀行持ち株会社グループ全体で15%までしか認められていない一般事業会社の議決権保有についても、投資専門子会社が持つベンチャーキャピタルや事業再生会社に例外を認める形で抜け道が用意された。このように、日本では、リーマンショック前までの欧米に倣って、銀行の業務範囲をどんどん拡大してきたのだ。