かつて筆者が勤めていた
投資銀行にも働く競争原理

 『週刊ダイヤモンド』7月26日号の第3特集は、「囚われた投資銀行」というタイトルで、グローバル金融規制強化でビジネス環境が変わる投資銀行業界を取り上げている。

 筆者は、長年どっぷり投資銀行業界に浸かったわけではないが、1990年代に米系のメリルリンチ、仏系のパリバ証券に勤めたことがあるし、その後も資本市場に近いところで働いている。

 加えて、バブルの大きな原因となっているビジネスでもあるし、評論的に取り上げるべき不正の事例にも事欠かない、この業界の現状と将来には、大いに関心を持っている。最新事情はどうなっているのだろうか。

 なお、投資銀行とは何なのかだが、商業銀行のように他人のお金を融資するだけでなく、あるいは純粋なブローカレージ業務の証券会社のように注文をつなぐだけでなく、「自分の手金も投資する金融機関」というくらいの理解で良かろう。

 投資銀行に勤めている人は、しばしば自分たちのことを「インベストメントバンカー」あるいは単に「バンカー」などと自称する。これらの表現には、「私は単なる(ブローカレージの)証券マンとは違う」という微妙な差別意識があるように思うが、やっていることはおおむね証券会社と同じだ。特別に高級な職業だと恐れ入る必要もないし、逆に蔑む理由もない。

 記事の内容を筆者なりに少し深読みすると、FICC(金利・債券・通貨・コモディティ)・株式・資本市場の仲介ビジネスの3つを全て備える「フル装備の投資銀行」は、グローバルな競争にあってゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェースの米系2社に「勝ち組」が絞られつつあるようだ。

 欧州系では、投資銀行ビジネスに後発で参入してきたドイツ銀行が必死に残ろうとしているようだが、英国系のバークレイズは商業銀行に、スイス系のUBS及びクレディ・スイスはプライベートバンク・ビジネスに、それぞれ原点回帰するような形で撤退する方向性のようだ。