「大阪で漁業ってやってるの?」
全国でも地元でも知名度は低いものの、意外なことに大阪は漁業が盛んな地であることを前回ご紹介した。「大阪の魚は美味しい」と知ってもらいたい。そこで、大阪では初となる魚介類のブランド化にあたり、大阪府漁業協同組合連合会が選んだのは、なんと身近に圧倒的なライバルのいる「タコ」だった。
高値の明石ダコに
圧倒されていた「泉だこ」
「平成18年に特許庁が地域団体商標登録制度を導入した際に、泉州でなじみが深く、安定して獲れていたタコを登録してみようかという話になりました」と事業課課長の内藤晃さん。
しかし、タコといえば、全国的にも、関西圏においても圧倒的にメジャーなのは兵庫県の明石ダコだ。
泉佐野漁業協同組合の高倉智之さんは憤る。
「泉州のタコは甘みがあって美味しい。明石ダコに全然ひけをとらへん味やで。そやけど腹立つことに、値段がドンと違うんですわ」
明石ダコは、「無名」の泉州のタコよりはるかに高値で取引されていた。
タコだけではない。関西の市場では、どんな魚も明石ブランドは絶対的な価値がある。その価格差はあまりにも大きかった。大阪の魚の価値向上という起爆剤としても、泉州のタコの「ブランド化」が取り組まれることになった。
が、登録にあたって、いきなり壁にぶつかる。特許庁は指摘した。
「周知性がない」
イタいところをつつかれた。地域商標登録制度は「隣接都道府県に及ぶ程度の周知性」の事実証明が必要だったのだ。
関西圏ばかりか大阪府内ですら残念なほど知られていないタコを携えて、大阪府漁連は兵庫、京都、奈良などを行脚。「販売実績」を作ってなんとか書類を提出。そして平成22年、4年がかりで泉州のタコは、ようやく「泉だこ」として地域商標登録が認定された。定義は「大阪府の泉州沖でとれる、マダコをボイルしたもの」。タコとしては全国で初の認定だった。
意外なことに、明石ダコは商標登録されていなかったのだ。「もう十分メジャーだから、登録する必要がなかったんでしょうねえ」と内藤さん。