『週刊ダイヤモンド』6月20日号の特集は「陸vs海vs空 乗りもの王者決定戦」。その中から、DeNAがベンチャーのZMPと組んで進めるロボットタクシー構想について、経営陣へのインタビューを通して、狙いを浮き彫りにした記事を紹介します。

「2020年の東京オリンピックまでに、ロボットタクシーを走らせる──。会見ではそう言ったけれど、実際にはもっと早く走っているだろう」(谷口恒・ZMP社長)

 5月12日、インターネット事業を展開するディー・エヌ・エー(DeNA)と、ロボット技術の開発を行うベンチャーのZMPがタッグを組んだ。ZMPの社名はあまり知られていないが、創業者の谷口社長は、自動車や電機といった「乗りもの」の関連業界では、よく知られた存在だ。実際に、車載機器や無線に強みを持つJVCケンウッドや米半導体インテルと資本提携を結んでいる。

 自動車メーカーからの提携依頼の申し出が引きも切らない。後述するように、米中の自動車・ITプレーヤーがこぞって自動運転技術に興味を持っており、日本の自動車産業にとって開発競争で敗北することは許されない。各社が喉から手が出るほど欲しいのが、ZMPの「SLAM」と呼ばれる技術。自動車を制御するときに、標識やGPSに頼らず、周囲環境からセンシングして自車の位置を特定する技術のことをいう。

 なぜ、組み手がDeNAだったのか。ここから先は、中島宏・DeNA執行役員と谷口社長に、提携の狙いと乗りものの未来について語ってもらった。

──提携の狙いは?

谷口 確かに、自動車メーカーからの話もたくさんあった。でも、うちは独立性を保ちたい。トヨタ自動車とも日産自動車とも対等に付き合っていきたい。理想のモデルは、独ボッシュや独コンチネンタル。彼らは多数の完成品メーカーと対等に付き合っている。

 中島さんの熱意、意思決定のスピード、執行能力。三拍子そろったところにほれ込んだ。

中島 近い将来、有人タクシーよりも無人タクシーの方がメジャーになっている。夢物語の話をしているわけではない。モビリティの未来を描いたときに、ZMPの技術が必要だと思った。

谷口 これまで、車の世界で進んできた技術革新は連続的だった。パワートレインにしても、燃費技術にしてもそう。既存技術の延長線上のものにすぎなかった。でも、もうその世界は通用しない。ITで起こるイノベーションは破壊的。自動車のものづくりでも、そんな領域が増えていると感じる。だから、すでに、自動車産業でも、一部では水平分業化が進んでいる。

中島 製造原価で稼ぐ時代から、サービスモデルで稼ぐ時代へ変わっている。

──自動運転は規制でがんじがらめになっている。自動車メーカーによる抵抗もある。ロボットタクシーの実現は難しいのでは?

谷口 7割の確率でオリンピックまでに間に合うと思う。1964年の東京オリンピックのときだって、東名高速道路や東海道新幹線が土壇場でできちゃった。

中島 14年頭に自動運転の解釈ががらりと変わったことがあった。法律改正を伴わなくてもよくなったり。規制は問題にならない。

──乗りものの未来はどうなる?

谷口 インターネットが普及して、むしろ、移動の機会が増えたと感じる。大事なことはテレビ会議では済ませなくて、直接会って話すもの。ロボットタクシーができれば、移動がおっくうだった高齢者が外に出られる。おじいちゃんがモテるようになる。社会が元気になる。

中島 移動の価値が変わる。交通弱者に優しい乗りものが出てくるのはもちろん、ビジネスマンの移動時間がもっともっと有効に使えるようになる。僕だったら、ロボットタクシーをWi-Fi完備にしていつでもどこでも仕事をできるようにしちゃう(笑)。

乗りものファンが萌える
資源調査船、戦闘機、戦車

 近年、「乗りもの(モビリティ)」業界に異業種のプレーヤーが続々と参入しきています。DeNA・ZMP連合がその典型例。海を渡れば、米Googleや米Apple、中国IT御三家(バイドゥ、アリババ、テンセント)といったITジャイアントたちも食指を動かしています。

 なぜ、これほどまでに多くのプレーヤーが「乗りもの」に惹き付けられるのでしょう。

 今も昔も、人々は「乗りもの」にある種の憧れや夢を抱いてきました。そして、「乗りもの」業界に身を置くエンジニアたちは、憧れや夢を実現させようと、コツコツと技術を磨いてきたのです。

『週刊ダイヤモンド』6月20日号の第1特集は「陸VS海VS空 乗りもの王者決定戦」です。

 鉄道、自動車、船、航空機――。陸空海を自由自在に操る乗りものには、ニッポンの凄い技術が凝縮されています。本特集では、人気の乗りものたちに関わる最先端技術を余すところなく紹介しています。

 その代表例が、三菱航空機「MRJ」とホンダ「ホンダジェット」。いよいよ、半世紀ぶりに国産旅客機の商業飛行が始まろうとしています。誌面では、彼らのライバルとなるリージョナルジェットやビジネスジェットを徹底比較しています。

 乗りものファンが「萌える」コンテンツも盛り込みました。

 海洋資源調査船「白嶺」の乗船記はなかなか迫力がありますし、「至高の戦闘機・戦車・潜水艦グラビア」は軍事ファン必見です。

 個人的に気に入っているコンテンツは二つあります。一つ目は、全日空機体工場へまさにドックインしようとしているB777の勇姿(特集巻頭のトビラページに写真があります!)。大型航空機って、背後から見下ろすと、とてもとても艶かしいのですね。

 二つ目は、「ミステリアス貨物線の秘密」。ブルートレインなど正統派車両が相次いで引退したり、外見重視のデザイン列車がもてはやされたりしている中、武骨に頑張っている姿に魅せられてしまいました。

 ……といった具合に、乗りもの談義は尽きませんが、ページをめくれば、あなたが乗りものに夢中になっていた少年時代へタイムスリップできちゃいます。ぜひ、ご一読ください。

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2015年6月20日号「陸vs海vs空 乗りもの王者決定戦」

◆Prologue 異業種群がる乗り物ウォーズ
◆Part1    陸:鉄道、自動車、特殊車両…
         陸の乗りもの大激走!
◆Part2    空:リージョナルゲット隆盛前夜

         勝負に出る日の丸航空機
◆Part3    海:クルーズから陸奥・武蔵まで
         船旅で堪能する海洋浪漫
◆Epilogue  トヨタ・JRがタッグを組む日

 

 

 

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