ガラスに直接、液晶ディスプレイガラスを張り合わせる。壁に張ることも可能だが、ガラスにガラスを張るという需要の創出を目指す

 今年の春より、液晶ディスプレイガラスで世界2位の旭硝子は、“ガラスにガラスを張る”という世界初の新製品(「インフォベール」)の本格販売を開始した。水面下で温めてきた3年越しの計画だ。

 この新製品は、デジタルサイネージ(電子看板システム)の一種だが、ガラスに直接、液晶ディスプレイを張り合わせるために、専用の架台は必要としない。また、一般的なサイネージと比べて視認性を大幅に向上させた。

 見た目は、厚さ35ミリメートルのディスプレイをガラスに隙間なく張り合わせた格好で、躯体はフラットな構造で省スペースに徹した。すでにイオン・グループの一部の店舗などに25台が設置されており、現在は“たくさん人が集まる場所”を中心に売り込みをかけている。

 例えば、鉄道会社には、まだ誰も手を付けていない座席の後ろにある窓ガラスの一部に小型ディスプレイを張り付けてもらう。鉄道会社にとっては、新しい収入源(広告媒体)となり、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けた車両の改良計画の動きにも一致する。

創業109年目の挑戦

 一見すると、旭硝子は、ガラスメーカーだからディスプレイの出荷量を増やしたいだけに思える。だが、その裏側には、積年のビジネスモデルをひっくり返す“仕掛け”が巧妙に埋め込まれている。

 まずは、戦略的な価格設定だ。現行のサイネージは55インチの据え置き型で200万~300万円だが、大規模工事が不要な旭硝子のものは100万~150万円になる。