サムライ債、ショーグン債、カンガルー債、パンダ債、点心債、キムチ債…。これらの債券はすべて実在のものです。債券市場では、外国の発行体(外国政府、国際機関、民間企業等)が発行する債券(外債)のことを、発行地に関連の深い特別な名称で呼ぶ慣行があります。

 サムライ債は聞いたことのある方も多いと思います。これは、日本において発行する円建外債のことです。ショーグン債とは日本において発行する外貨(非日本円)外債、カンガルー債はオーストラリアにおいて発行する豪ドル建債券、パンダ債は中国本土において発行する人民元建債券、点心債は香港において発行する人民元建債券、キムチ債は韓国において発行する外貨(非ウォン)建債券のことです。他にもアリラン債 、ブルドッグ債、ヤンキー債などたくさんあります。

フジヤマ債の発行は人民元国際化策のひとつ

 最近、「フジヤマ債」という名称の社債が発行されました。日本の象徴の富士山にちなんだ名称で、三菱東京UFJ銀行が国内で初めて発行した人民元建ての債券です。今後、他行も続く予定です。あくまでも愛称なのですが、中国が起源で日本の国民食にちなんだ「ラーメン債」、「サクラ債」や「テンプラ債」なども候補として挙がっていました。

 人民元建債の日本における発行は2011年12月の日中首脳会談で合意していましたが発行は遅れていました。13年に発行を始めたシンガポールの人民元建債は「獅城債」(そもそも国名に「ライオンの都市」の意味があり、獅城はシンガポールの別称)、14年に始めた独仏の人民元建債はそれぞれ「ライン債」(ライン川から)、「凱旋債」(凱旋門から)と呼ばれています。

 今回のフジヤマ債では、発行元の銀行が中国で貸し出す人民元を海外(日本)で調達し、中国国内に送金することになりますから、まさに人民元の国際化の一環と認識されます。このように中国は人民元の国際化を着々と進めているのです。