なぜ自分の権利を主張できないのか
なぜ会社は気づかないのか

 育休から復帰した後の女性たちに話を聞くのは、非常に興味深い。結婚後の働く女性、出産後の働く女性両方に何度も取材したことがあるが、結婚自体はそれほど働く女性のライフスタイルを変えない(夫が妻に過剰に完璧な家事を求めたり、結婚してすぐに誰かの介護が必要になったりしない限り)。

 一変するのは出産後、そして育休復帰後だ。彼女たちは出産や育児や職場復帰を通して、子どもを守ることや社会との関わり方や家庭のあり方について目まぐるしく考える。しかし、忙しすぎて自分が考えていることにも気づいていない。

 取材は、一方が明確に聞き役になるという、日常生活ではあまりない状況だ。その状況になって、第三者に対して語る場ができて、出産してからの数年間を、時間をかけて振り返って初めて、彼女たちは自分がこの数年間でどれだけ変わったかに思い当たる。そのように私には見える。

「復帰後に時短勤務になったけれど、仕事量は正直変わっていない。お給料だけ減りました」と言った女性は何人かいた。「私の職場では、時短勤務者の査定は自動的にBクラス以下になるんです」「うちの会社は前年の働きぶりで翌年の給料を決めるはずなのに、出産して戻った人に対しては、その評価制度はない(評価アップであっても反映されない)」という人もいた。

 同時に「時短の社員に対して、周囲の人たちの理解があって本当に良かった。そうでなければ復帰できなかった」という声も多く聞いた。公私合わせて100人以上の女性に話を聞いていると思うが、2~3ヵ月しか産休・育休を取らなかった女性も数人いた。

 私がポジティブな話題を積極的に取り上げていたからということもあるが、職場の待遇にあからさまに不満だと言う女性は少なかった。査定がBクラス以下になっても仕事量が同じで給料だけ減っても、彼女たちは職場に文句を言わない。なぜなら声を上げれば自分の立場や職場の雰囲気が悪くなるからだ。

 マタハラと言われるような、過酷なハラスメントに遭えば声を上げる女性もいるのだろうが(それでも声を上げられない人もいるだろうが)、多くの女性は出産・育児で会社から自動的に「戦力外」として扱われることを受け入れてしまう。一律に戦力外として扱われることは、やんわりとしたハラスメントだと思うのだが。

 なぜ彼女たちは、自分の権利を主張できないのだろう。ある女性はこう言った。

「自分が弱者だって言うのって、すごく勇気のいること。だって、『お前そういうこと言うヤツだったの? そうやって弱い立場に立って権利を主張するヤツだったの?』って思われるでしょう」