アメリカに「bellwether(ベルウェザー)」の異名を持つ企業がある。

 ベルウェザーとは、羊の群れを先導する親分羊のような存在だが、その会社の動向によって残りの群れも同じように動くという意味だ。

 今回取り上げるフェデックスは、まさに、アメリカ経済の兆候を一番早く体現するベルウェザーの代表格である。企業は注文がなければ発送もしない。フェデックスのような運送業者が忙しくなれば、企業の受注が回復していることを意味し、経済にとっては朗報だ。

 アメリカ経済がとうとう底を打ったのではないかという憶測が流れる中、フェデックスが先頃、2009年6-8月期の業績見通しを上方修正した。正式な業績発表は今週後半まで待たなければならないが、明るい材料を待ち望んできた投資家たちは、小躍りしてフェデックス株に飛びついている。

 前年の同時期に比べるといまだ53%も低いが、2009年6-8月期の一株利益は、0.58ドルと、当初予想の0.30~0.45ドルを上回る見通しという。値段の高い国際配送が回復してきたこと、原油価格が安くなったこと、厳しいコストカットによって効率経営が軌道に乗ったことなどが理由としてあげられている。

 フェデックスは「レイオフをしない会社」を自称し、賃金カットをしながら不況を耐えしのいでいたが、さすがに今年春になって29万人の従業員のうち1000人を削減し、関連会社でも同様のレイオフを行った。だが、経済がこのまま回復すれば、昨秋不況に耐えきれず米国内向けの宅配事業からの撤退を決めたDHLのシェアを奪いながら、盛り返してくることは間違いないだろう。

 ところで、日本でフェデックスと言うと、飛行機を利用した国際宅配便「フェデックス・エクスプレス」の印象が強いが、アメリカでは数々のサービスを張り巡らせている。たとえば、「フェデックス・グラウンド」は、日本でいう宅急便に近く、国内の集配送を格安で行うものだ。