未来は、アマゾンの動きの断片から読み取ることができる――そんな画期的な未来予測本が誕生した。アップルやグーグルをブランド評価で上回り、文字通り世界一のテクノロジー企業となったアマゾン。同社は巨大だというばかりではない。同様の大企業では類をみない年平均25%もの成長を続けていることは驚くべき事実で、このことは常に新しい分野に進出していることを意味している。そして、アマゾンが新たに進出した分野では、ライバル企業はその脅威に対抗すべく、アマゾンのビジネスモデルを研究し、自らのビジネスに取り入れている―ーさまざまな業界がまさに「アマゾン化」しているのである。『アマゾン化する未来:ベゾノミクスが世界を埋め尽くす』(ダイヤモンド社刊)は、フォーチュン誌のトップ・ジャーナリストがアマゾン内外を徹底取材して、コロナ禍でもさらなる大きな成長を遂げたアマゾンの秘められた内実に迫り、アマゾンのライバル企業がどのように対抗しようとしているかを探りながら、未来の世界を見事に描き出している。本記事では、同書から特別にそのエッセンスを抜粋していく。(小林啓倫 訳)

アマゾンの配送トラック
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アマゾンは実質的に大手運送会社になりつつある

 配送をスピードアップさせる競争の中で、アマゾンは配送のあらゆる段階でイノベーションを進めている。アマゾンが販売する商品は、農家や酪農家、メーカーから倉庫に移動させなければならず、時にはアマゾンのアルゴリズムが、商品を需要のある場所に近い別の倉庫に、移動させる必要があると判断することもある。

 アマゾンは小売事業を展開する中で、実質的に巨大な運送会社になりつつあり、もしアマゾンが現在のペースで配送業者を増やし続ければ、アマゾンはこの業界でも破壊的なプレーヤーになる可能性がある。

 その動機となるのは、コスト削減だ。2018年、アマゾンは全世界で推定44億個もの荷物を配送している。中国やインドなどの生産者から米国や欧州の倉庫に商品を届けるコストを下げるために、アマゾンは自社でコンテナ船やジャンボ・カーゴジェット、トレーラーの一群を所有している(UPSやフェデックス、DHLの関係者はこの点に注意すべきだ)。シティグループによれば、アマゾンは長距離輸送の荷物を自ら管理することで、UPSやフェデックスを利用する場合と比べて、年間11億ドル〔約1200億円〕の節約が可能だという。

 アマゾンはこの計算をよく理解しており、コスト削減を現実のものとするために、多額の投資を行っている。2019年の時点で、同社は1万台以上のトラックを自社で運用している。また、アジアからの貨物を取り扱うコンテナ船の貨物スペースを借りており、さらに同社によれば、2021年までに70機のカーゴジェットを稼働させる予定だ(一方、フェデックスは681機の航空機を所有またはリースしている)。アマゾンはテキサス州、イリノイ州、オハイオ州、ケンタッキー州北部に、輸送機による輸送のハブとなる施設を開設しようとしており、同社の航空機利用が拡大を続けていることは否定できない。

 ただ、運送の専門家の中には、同社がフェデックスやUPSに対抗する運送システムを構築できるかどうか、懐疑的な立場をとる者もいる。この2社は過去数十年にわたり、大規模なネットワークの構築に多額の投資をしてきたからだ。

 また、運送業界の大部分は、アマゾンの脅威に目を向けていない。フェデックスのフレッド・スミスCEOは、投資家向けの電話会議において、「現時点では、彼らを競合とは見なしていません」と発言している。

 しかし、ボーダーズやバーンズ・アンド・ノーブルのような大手書店チェーンは、かつて、アマゾンが書籍市場に破壊的な変化をもたらす可能性については懐疑的だった。その後に何が起きたかを考えてみるとよい。アマゾンはAIが管理する強力な物流会社になろうとしており、クラウドコンピューティング・ビジネスのAWSを構築したときと同じように、既存の企業よりも安く長距離輸送する方法を見つけ、他社への配送サービスの提供を開始することは十分に考えられる。

 実際に、フェデックスがアマゾンを深刻な脅威として認識し始めたサインもある。2019年の半ば、同社は米国内でアマゾンの荷物を配送しないことを発表した。また、米証券取引委員会に提出した10-K報告書〔日本の有価証券報告書に相当する年次報告書〕の中で、アマゾンがここ数年、輸送手段に多額の投資を行ってきたことを考えて、現在はこのEコマースの巨人を競争相手と見なしていることを明らかにしている(つづきはこちらで)