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「学び」はどこへ向かうか?――ITが拡張する教育の現場

品川女子学院、聖光学院の生徒たちが、
ITを活用した学びで得たものとは?

野本竜哉 [iOSコンソーシアム文教ワーキンググループリーダー]
【第1回】 2015年7月21日
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 実社会で必要なスキルにより近い学びが可能とされており、同校では国内外の学校とコラボする形でCBLを推進してきた。今回はシンガポールにそのコラボ校が集うことになったのだ。相互に英語でのプレゼンテーションを行うにあたり、事前準備としてクラウドやiPadを多用したという。

品川女子学院の生徒が製作したデジタル絵本。「New Years Day」や「Rice Cakes」といった日本独特の言葉をタップすると説明や写真などが出るようになっている。また、国旗の部分をタップすると表示言語を切り替えられたりと、インタラクティブ要素を持っている

 彼女達が実際に「課題解決」のために作り出したものの一例として「海外で日本語や日本文化を学ぶ子供達のために作ったデジタル絵本」のデモも披露された。クリックすると説明文が表示されたり、英語と日本語をボタンひとつで切り替えできたり、音声読み上げができたりなど、その作り込みに聖光学院生から感嘆の声が挙がっていた。

 その後、両校は互いの学習準備の進め方や学校としてのサポート体制などの違いについて議論。ICT環境、学校の教育方針、やりたいことに対する学校のサポートなど様々な面で、意見交換は途切れることなく約2時間にわたって続いた。

ツールの使い方は
生徒が自ら決める

 両校の生徒は今回、Evernoteというツールをきっかけにつながったが、彼らの間には「生徒主導で課題を解決していこうとする意識」が共通のバックボーンとして存在することを感じた。クラウドやICTはこうした生徒達の可能性や創造性を引き出すための「敷居」を下げることに貢献したということができるかもしれない。

 両校が導入したEvernoteやGoogle Appsなどは、いわば汎用的なツールであり、明確に「こう使う」というルールが定まったものではない。だが、両校は生徒達に対し「自由な発想や使い方が許されるツール」としてアクセスを確保し、彼らはそれらを“武器”として自ら活用シーンを開拓している様子が垣間見えた。

 両校の生徒達を見ていると、適切なツールや環境を提供し、教員や保護者が過度すぎないフォローを行うことが「主体的な学び」を促進する部分があるように思う。少なくとも両校の生徒達からは、武器さえあればもっと様々な力を発揮できるような、そんなポテンシャルを感じた。

 もちろん、クラウドやICT機器は使い方によってはリスクもあるし、万能でもない。だからと言って、工夫の余地が少ないツールやガチガチに制限された機器を渡したり、利用自体を制限することは、かえって生徒の主体性や創造性、そして意欲を奪うことになりかねない。バランス感覚が重要になってくるだろう。

 今回、両校は「自由度の高いクラウドツール」により生徒達の可能性を伸張させることに成功したと筆者は感じる。生徒たちのさらなる「主体性と創造性の発揮」と、その成長を支えるために両校が展開していく今後の動きに注目したい。

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野本竜哉
[iOSコンソーシアム文教ワーキンググループリーダー]

のもと・たつや/一般社団法人iOSコンソーシアム文教ワーキンググループリーダー。大学受験時に数年来の疑問がweb上の動く教材で氷解した経験から、教育のITによる拡張を志向する。公教育から教育ベンチャー(EdTech)の動向の追跡や、企業と教育者を集めての月例勉強会、文科省協賛イベントへの出展などを主導している。

「学び」はどこへ向かうか?――ITが拡張する教育の現場

近年急速に進みつつある教育分野のIT化の現状について、特に小学生~高校生向け教育の現場と周辺の動きを取材。急速に動き出した私立学校のIT化に加え、公立学校(市町村・都道府県の教育委員会)で起きているITを活用した教育の“拡張”を紐解いていく。

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