僕は、IT関係の記事を20年近く書き続けてきた。すぐにでも製品化されそうだが、いつまでたっても店頭に並ばない製品が数多く記憶に残っている。「もしかすると、もう製品が出てこないのではないだろうか」と、興味さえ冷めつつあったのが、燃料電池と有機EL液晶のテレビだ。どちらも、技術が発表されてから、延々と開発が続いていて、製品は、いくら待っても出てこなかった。

 そんなイメージがあるから、ソニーが昨年の各種展示会で有機EL液晶テレビの発売をアナウンスしたときには、狐につままれたような気がした。

 12月に入って大手家電ショップに出かけると、XEL-1が店頭に並んでいた。ついに、有機EL液晶を採用したテレビが市販されたのである。僕にとっては、まるで夢のようなできごとだ。もちろん、ソニーの開発者も同様であろう。

驚異的な薄さより、価値は画質にある

ソニーの有機ELテレビ「XEL-1」

ソニーの有機ELテレビ「XEL-1」
電流を流すと自発光する有機物質(organic material)をパネルに採用。11V型の3mm超薄型ディスプレイ搭載。標準価格20万円

 展示会で話題になったのが、まず、その薄さだ。

 XEL-1の最薄部は、驚異の3ミリ。「下敷きのよう」とまでいっては大げさだが、これまでのテレビと比べると驚異的な薄さであることは間違いない。

 だが実は、従来の液晶でも薄い製品はすでに登場していた。

 たとえば、ソニー製のモバイルパソコン「VAIO type T」のLEDバックライト液晶は約4.7ミリだ。3ミリなら確かに薄い。だが、11V型というサイズを考えるなら、大騒ぎするほどの薄さではないのだ。