国内需要を縮小させる“少子高齢化”が進む中で、日本企業がさらなる成長を模索するための手段の1つとして、国境を超えるM&A(企業の買収・合併)がある。日本企業による外国企業のM&Aは、すでに30年の試行錯誤の歴史を持つが、国内では未だにネガティブな印象が強く、慎重な企業も少なくない。それでも、創業10年と少しで“世界の5強”に入ったGCAサヴィアンの渡辺章博社長は、「M&Aの90%以上は成功だ」と言い切る。その真意を聞いた。
──近年、日本でもM&Aのクロスボーダー取引(当事者のうちどちらか一方が外国企業となる案件)が増えています。また、国内では民事再生手続き中のスカイマーク・エアラインズの再建を支援する投資ファンドであるインテグラル代表の佐山展生氏の名前がクローズアップされる一方で、独立系M&A助言会社のGCAサヴィアンはスカイマークのFA(フィナンシャル・アドバイザー業務)を務めていました。佐山代表と渡辺社長は、かつて一緒に国内初のM&A助言会社であるGCAを立ち上げた経緯があります。現在の両者はどのような関係にあるのですか。
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佐山代表とは、喧嘩別れしたわけではありませんよ(笑)。
2004年にGCAをスタートさせ、それまで日本に存在しなかった“M&Aの助言会社”という業態を根付かせようと活動していましたが、GCAが大きく成長する過程において、私たちの間に“方向性の違い”が出てきました。そこで、じっくり話し合った末に、友好的に別れたということです。
実際、08年にインテグラルがスタートする際には、私たちも出資しています。現在は、別々の道を歩んでいるとはいえ、M&Aの案件によっては同社と組むという関係にあります。役割が違うと言えば、よいでしょうか。
──大事な話だと思いますので、もう少し詳しく教えてください。両者の間に出てきた方向性の違いとは、どのようなことだったのですか。
そうですね。世の中では誤解が多いと思いますので、順を追って説明します。いわゆる「投資銀行」(イベントストメント・バンク)は、顧客が保有する資産を増やすために投資の専門家の立場でアドバイスすることから始まっています。すなわち投資銀行とは、顧客の資産運用を任される立場であり、運用の手法の中に、M&Aというものがあったと言えます。昔は、投資銀行と言えば、非上場の企業が多かったのですが、現在は米ゴールドマン・サックスなどを初めとして、株式上場している公開企業が多くなっています。