完全競争市場から不完全競争市場の解明へ

 スティグリッツはのちに完全競争市場が成立する条件を次のように定義しています。

(1)多数の市場参加者(生産者や消費者)が存在
(2)財・サービスの質は同等
(3)財・サービスに関する情報(価格、スペック)を市場参加者全員がもつ(情報の対称性)
(4)市場への新規参入や撤退は自由

 現実には存在しないけれど、完全競争市場をモデルにしておけば、独占、複占、寡占市場の分析や、情報の影響分析も可能になります。20世紀後半の新古典派経済学はそのように発展していきました。

 つまり、人間の完全合理性、完全競争市場などの理想的な条件を前提とした分析から、より複雑で現実的な状況(不完全競争市場)を解明していく方向へ進むわけです。たとえば、その後明らかにされつつある代表的な概念を整理しておこう。

・限定合理性:人間の合理性には限界がある
・情報の非対称性:情報は偏在する
・寡占市場:少数者の競争市場
・独占市場:独占企業の存在

 スティグリッツは情報の非対称性の研究でノーベル賞を受賞しています。