地方経済は全般に厳しい環境にあるが、先日、ニッチな市場を開拓し続けている元気溢れる中小企業を訪問する機会があった。
山形県鶴岡市にある(有)小川電器商会は、外見は普通の大手家電メーカー系「パパママ・ショップ」に見える。しかし、2階に行くと仰天する。マニアックな超高級オーディオ機器が所狭しと並べられているのだ。
大半は、大手量販店ではお目にかかれない輸入品や、同社でレストアしたマニア垂涎のビンテージ中古品である。
同社は「バック工芸社」というブランドで、独創的なスピーカー台を製作・販売している。その台に高さ20センチメートル程度の小型スピーカーを乗せ、真空管アンプで音を聴かせてもらった。CDプレーヤーにはオランダ製真空管クロックが組み込まれていた。
小川圭一社長は、「f分の1ゆらぎ」理論で考えるとデジタル時代であっても真空管は合理的だと熱く語っていた。小型スピーカーは驚くほど朗々と鳴っていた。後ろにある大型システムが鳴っているのかと勘違いするほどである。
この「オーディオラボ・オガワ」には県外からも頻繁にファンがやって来る。インターネットを介しても注文が来る。大消費地に店を構える必要はなくなっている。いまや顧客の八割は東京圏だ。また、インドや中国のバイヤーが、富裕層向けにビンテージ中古品を買い付けにやって来るという。