現代フランス哲学を専門とする著者が、「封建国家」が崩壊して「近代国家」が形成された16世紀以降の西洋思想家たちの著作を読み直し、そこから現在の政治体制が抱える、さまざまな問題点の打開策を探っている。
紹介される思想家はホッブズ、ルソー、カントら7人。著者は「自然権」「主権」という概念に着目し、各概念が思想家ごとに深められる過程を考察する。後半では、主権者が有する立法権と、法律に基づき個別・具体的な政策を行う執行権(行政権)の対立に焦点を当てる。「実際の統治においては、行政が強大な権限を有している」として、主権を従来の立法権中心に考えることの問題を指摘。「主権はいかにして執行権力をコントロールできるか」が現代民主主義にとって重要だと説く。
著者は東京都小平市の都道建設計画の見直しの是非を問う住民投票の活動に加わった経験があるが、そこで市民と、市長・市議会の間の壁の厚さを感じたであろうことが、執筆動機に作用しているように思える。古典によって現代を問い直す、野心的な一冊だ。
※週刊朝日 2015年7月24日号