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震災を機に賃料が高騰した理由は、需給バランスの変化だ。津波や倒壊の被害で住める物件が減り、賃貸住宅の供給は激減した。一方で、復興支援などの仕事で仙台に転居してきた人、今まで住んでいた住居に住めなくなり新たに賃貸する人が出てきたことで、賃貸住宅の需要が増加した。仙台では需要過多状態になり、賃料が上がった。
大手物件検索サイトでは、震災後に8割も掲載物件が減少していた。数少ない空室情報に行列ができ、広告を出す前に入居者が決まっていたのだ。
震災前後で、不動産の取引利回りはほとんど動かなかった。利回りが同じで賃料が上がっているということは、その分だけ物件の売買価格が上がったことになる。物件価格もまた、2割上がっていたのだ。
ただ、同じ現象が仙台以外の東北の都市で起きるかといえば、疑問もある。仙台は「東北の東京」とも言える中枢都市で、人が集まるため住宅は不可欠となる。次の地震が懸念されても、仙台を離れるわけにはいかない人が多く、耐震性のあった物件は超人気になった。
ここで言いたいのは、中枢都市において震災倒壊を免れた物件は資産価値が高まったという事実だ。首都圏で大地震が起これば、同様の現象が起きるだろう。倒壊や破損を免れた居住可能なマンションに需要が殺到し、そのようなマンションの資産価値が高まる。これは東京も同じだと考える。
次に、地震が来てもサバイバルできる都心の物件は、震災後に需要や価格が高まるのは必至だ。倒壊する物件が多く、再建や再開発は震災直後に停滞し、建設費も暴騰するだろう。そうなると残った物件に需要が集中し、仙台と同じ現象が起きることは容易に想像できる。
震災後に話題になった「N値」とは?
耐震に関する情報収集を怠るな
さて、東日本大震災時に消費者の間でちょっと有名になった言葉に「N値」がある。N値とは、地盤の硬軟を示す指標だ。63キロのハンマーを約76センチの高さから落として、鉄の円筒を地面に30センチめり込ませるのに必要な回数で示される数字だ。50を超すと強固な地盤とされる。震災後、湾岸や千葉県、神奈川県のマンションのショールームでは、N値を問い合わせる顧客が散見され、営業マンも面くらっていた。
たとえば、「浦安市の高洲では深さ45メートル未満のN値がおおむね5以下だった」「千葉県我孫子市某所は、20メートル以上掘らないとN値が連続して10を超えないようだ」「高級住宅街の市川の本八幡一帯の場合、20メートルと掘らなくてもN値は50を超えるらしい」といったデータが出回った。