2007年12月14日に、国会の会期を31日間再延長することを、衆院本会議は賛成多数で議決した。年越しの国会。かなり異例な事態だ。そこまでして何を決めるかといえば、新テロ対策特別措置法だ。要するにインド洋における給油活動。どうしてもやりたいらしい。

 テロ防止と根絶への国際社会の取り組みに寄与することを目的にあげるこの法案については、安倍前首相のいきなりの退陣や、大連立騒動や小沢民主党党首の辞意表明など、とにかくいろいろあったけれど、結局はこうして国会を通過する。

 テロとの戦い。このフレーズを僕たちは、9.11以降のこの数年、何度耳にしてきたことだろう。まるでジェリー・ブラッカイマーあたりがプロデュースするド派手で中身のないハリウッド超大作戦争映画のタイトルのように、このフレーズは世界中に流通した。

 でも9.11が起きてから数年が過ぎて、「テロとの戦い」なる言葉を臆面もなく口にする政治的指導者は、国際政治の舞台ではいつのまにかずいぶん少なくなった。イラク侵攻時にアメリカが掲げた戦争の大義が、実はまったくのフェイクであったことは、今では世界中の人が知っている。次にブッシュ政権とネオコンは、イランの核兵器開発は第3次世界大戦を誘発するとして、イラン征伐を国内外に強硬に訴えてきたが、12月3日に米国家情報評価(NIE)は、「イランは2003年から現在に至るまで核兵器開発計画を停止している」との見解を発表した。だからイランはもはや安全であるとまで短絡すべきではないと僕も思うが、少なくとも今すぐ侵攻しなければならないとのブッシュの主張は、完全に否定されたと見るべきだろう。

 ならばこのあたりでもう一度考えたい。テロとは何か。そして「テロと戦う」とは、具体的にどういうことを示すのか。そこに共同幻想は含まれていないのか。

「テロと戦う」とはどういうことなのか?

 レバノンとシリア、ヨルダンやエジプト、さらにシナイ半島に囲まれたパレスチナは、古代からユーラシアとアフリカとの交易の場であり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三大宗教が生まれた地でもある。

 16世紀から20世紀初頭にかけてオスマン帝国に支配されるが、第1次世界大戦終了後は、これに勝利した連合国側のイギリスに占領される(オスマン帝国は同盟国側)。この際にイギリスは、この地に暮らすアラブ人に対して戦争への協力を条件にアラブ国家の独立を認めることを約束していた。また同時にユダヤの豊潤な資金に目をつけたイギリスは、資金援助を条件にユダヤ人による独立国家の建設を支援することも約束している。