シリコンバレーでは、デリバリー(配達)がビジネスとして新しい局面を迎えている。次から次へと新しいデリバリービジネスが登場し、その内容もスタイルも異なっているのだ。

 まず大手企業のデリバリーから言えば、グーグルとアマゾンが挙げられるだろう。この2社は、ロジスティクスのレベルで配達を効率化して、ついに即日配達を行うまでになった。ことにアマゾンの場合は生鮮食品の即日配達が可能だ。

独自インフラのアマゾン、
vs 個人力のグーグル

 現在のところ、朝9時までに注文すれば、その日のうちに配達が受けられる。予定していたが、買い物に行けなくなりそうといった日にはありがたい。時にはデリバリーの枠がいっぱいになっていることもあるが、だいたいは即日で配達がくる。

 ただ、年会費が299ドルとやや高いのが欠点だ。299ドルには、プライム会員費も含まれるので、すでにプライム会員ならば200ドルを足す。また、配達は50ドル分を超えないと無料にならない。そういった条件はいろいろあるが、画面から野菜や果物、乳製品をクリックするだけという手軽さは、かなりの便利さだ。

 アマゾンは、この「アマゾン・フレッシュ」のサービスを独自の配送センターやトラックを配備して行っている。通常のアマゾンの注文では、外部業者が配送を行っているのだが、アマゾン・フレッシュではアマゾン自身がロジスティクスビジネスに乗り出したかたちだ。周知の通り、アマゾンはドローンによる30分配達もテスト中である。どこまでも「速くなる」を目指す会社だ。

 同じ即日配送でも、グーグルはアプローチが異なっている。独自の配送センターを持たず、また配送のトラック運転手も外部業者からの派遣でまかなっている。配送センターを持たないので、トラックは地元の店を回って買い物をして客に届ける方式である。つまりショッピングサービスと見た方が正しい。

 この「グーグル・エクスプレス」は、生鮮食品は扱わず、袋入りのスナック菓子やその他の腐らない食品、洗剤などの日用品、化粧品、スポーツウェア、文具品など、多岐にわたる商品を届ける。何が選べるかは、地元にどんなストアーがあるのかに依っているわけだが、デパートのターゲット、卸売りクラブのコストコなどと提携しているので、守備範囲は広い。

 化粧品やスポーツウェアがなぜ即日必要なのかには疑問が残るが、クリックすれば何でもすぐに手に入ると考えているデジタルネイティブ世代にとっては、これから当たり前とも言えるサービスになるのかもしれない。年間95ドル、あるいは毎月10ドルの会費が必要だが、会員にならずその都度5~15ドルの配達料金を払うという方法もある。

新興デリバリー会社インスタカート(instacart)のスマホアプリ

 デリバリーには、数々のスタートアップも進出している。

 生鮮食品では、インスタカートがもっともよく知られている。すでに全米15の都市部で展開されているサービスで、パーソナルショッパーになってくれる普通の人々とユーザーを結びつける。速い時では数10分で食料品などを届けてくれる。

 インスタカートの年会費は99ドル。その都度配達費を払う方法もあり、35ドル以上の注文ならば、2時間配達が3.99ドル、1時間配達が5.99ドル、35ドル以下ならば、それぞれ配達費が4ドル高くなる。

 ただし、ストアーによっては注文された商品を店員がピックアップし、袋に詰めて駐車場などに設けられたロッカーに保管している場合も多い。パーソナルショッパーはいちいち店内で商品を選ぶことなく、袋ごとピックアップし届けるだけだ。こうすれば店側も、最もきれいな野菜や果物を売ることができるはずだ。