財政再建計画を進捗させる隠れた主役は、日銀の量的・質的金融緩和である

 日本の不安は財政問題にある。財政再建に失敗するとどうなるか。最悪の場合、歯止めの効かない円安が起こって、強烈な輸入インフレに見舞われるのシナリオが予想される。

 不安に対して、財政再建が順調に進んでいるという理屈付けとして、「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期試算と略)が示されている。そこでは最近、2020年度の赤字幅(基礎的財政収支赤字)が縮小していると報道されている。

 以下では、この2020年度を目途にした財政再建計画の状況を、わかりやすく解説してみたい。筆者は、財政再建計画はまだ砂上の楼閣にあり、政府があまりに楽観的になると再建の目途が立たなくなると、懐疑的に考えている。日本はギリシャ以上に対GDP比で見て巨大な政府債務を抱える国であることを、忘れてはいけない。

赤字解消まで6.2兆円

 2015年7月の中長期試算では、2020年度の基礎的財政収支赤字(以下PB赤字と略)が▲6.2兆円になるという見通しになったが、徐々に赤字幅は改善している(図表1参照)。

 基礎的財政収支の黒字化とは、財政赤字額(=新規国債発行額)を減らして、その金額を国債費(=年間債務返済額+利払費用)の範囲内に収めることである。少し詳しく言えば、債務の膨張は、債務元本の増加をゼロにすれば止まる。たとえば、現在の新規国債発行額が36兆円で、国債費のうち債務返済額(償還額)が13兆円だったとする。純債務増加額は23兆円(=36兆円―13兆円)。利払費用が10兆円であるとすれば、純債務増加額を23兆円から10兆円まで減らせば、債務元本の増加はゼロになる。つまり、基礎的財政収支を黒字化するには、▲13兆円の収支改善が必要になる計算である(新国債発行額36兆円―国債費23兆円=13兆円)。

 その点、2015年7月の計画で、PB赤字が▲6.2兆円まで減ったことは前進と言える。その手前の2015年2月の計画では、2020年度のPB赤字の見通しは▲9.4兆円であった。さらにその前の見通しの推移をつづると、2014年7月は▲11.0兆円、2013年8月は▲12.4兆円だった。まだ赤字であることは確かだが、赤字幅が着実に縮小していることは間違いない。