「明るい北朝鮮」シンガポールの熱狂
50周年目の建国記念日に見た「愛国心」
今年8月、シンガポールは国を挙げてのかつてない大イベントに沸いた。50周年となる建国記念日だ。
建国記念式典では、シンガポール国旗カラーである赤と白の出で立ちで、国歌を歌い、国民の誓いを宣言し、国旗を振り、天に拳を掲げてガッツポーズをし、シンガポールの建国を祝う。チケットが当たらなかった人も会場付近に出向き、パレードや軍機の飛行、花火の打ち上げを楽しむ。
愛国心むき出しで雄叫びを上げてお祝いしている光景は、日本人には異様に感じられ、「明るい北朝鮮」と揶揄されることに一役買っていることであろう。
一党独裁が情報統制やゲリマンダー(定の政党・候補者に有利なように選挙区の区割りをすること)を行っているという点では共通しているかもしれないが、シンガポールと北朝鮮の内情は「お好み焼きとチヂミ」ほど似通っていない。そして、国家の下で育った国民感情が圧倒的に違う。「盛り上がりの種類」が全く異なっているのだ。
シンガポール建国記念式典の盛り上がりは、感覚的には日本人が家族でサムライブルーシャツを着こんだサッカー日本代表戦に近い。浪波節な楽しい一大国家イベントなのだ。
ローカル小学校に通う筆者の小学2年生の娘もまた、建国50周年の影響を受けていた。毎年変わる建国記念日のテーマソングを学校で学び、いつの間にかマスターしてきている。テレビ番組でナショナルデーの歌やプログラムが紹介される度に、楽しそうに歌を口ずさむ。
それを聞いて閃いた。自己肯定感は愛国心からも生まれるのではないかと……。きっと経済成長を続けるシンガポールの上層部の人たちはそれを知っているのに違いないし、何より国際競争力を高めるためには自己肯定感は必須だ。