スポーツが持つ「世界と未来を変える力」とは?

 さて、話を東京五輪のテーマに戻そう。これは見直しというよりも「スポーツには世界と未来を変える力がある」「みんなのTomorrow」というビジョンを“もっと具体的に”メッセージ化することが重要だと思う。では、具体的に、スポーツにはどのような「世界と未来を変える力」があるのか。

 そのひとつのヒントが、前回の東京五輪にある。それは「パラリンピック」だ。当連載でも過去に何度かパラリンピックについて言及しているが、第99回で紹介したとおり、パラリンピックというのは、(いまでは世界で通用する言葉になっているが)もともとは日本人が作った造語だ。

 このパラリンピックという言葉を作った故・中村裕氏(医師)は、障害者に対して「保護より働く機会」が重要だと訴えて「太陽の家」を設立し、障害者に対する働く機会を提供。ソニー、ホンダ、オムロン、デンソーなどの多くの企業を巻き込んで障害者雇用の機会を作った人物だ。言わば、日本おける障害者の自立の道を切り開いてきたパイオニア的存在だが、その中村氏が生みの親と言われるパラリンピックという言葉を冠した「パラリンピック大会」の第1回大会が、前回の東京五輪なのである。

 だからこそ今回の東京五輪にも、この歴史に対するリスペクトが必要だ。「日本人として誇るべき歴史を、未来に向けて捉え直す」ことこそが、今回の東京五輪のテーマであるべきだろうし、それこそが、日本が発信できる「世界と未来を変えるスポーツの力」の正体ではないだろうか。

「直視」することで変わるマインドセット

 具体的には、これも当連載の第105回ですでに提案したとおり、「オリンピックとパラリンピックの融合」だ。もうオリンピックとパラリンピックを分けて開催することの意味はなくなっていると思う。オリンピックには女子競技があり男子競技があるが、それと同列で障害者競技があってもいいのではないか。わざわざオリンピックとパラリンピックを分けて開催することは、「障害者の社会進出を促進する。つまり、障害者も健常者も同じように社会生活を送れるようにする」という、いまの障害者支援の流れにもそぐわないと思う。