一般用(OTC)医薬品市場が低迷する中で、日用品大手ライオンの薬品部門の鼻息が荒い。背景には、競合他社の上をいく“量から質への転換”戦略がある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)
過去最高益を2014年度に達成した、国内日用品3番手のライオン。売上高は前年度比4.4%増の3674億円、営業利益は同14.7%増の141億円、純利益は同20.8%増の74億円で、大幅な増益となった。
けん引役は業務用洗剤などを扱う産業用品事業と、タイや韓国、中国での海外事業だ。ただし、総売上高の7割(2744億円)を占める主力事業である国内一般消費財も、売上高で前年度比3.5%増、営業利益で同16.8%増と、堅調に伸長した。
一般消費財は主に、オーラルケア(口腔衛生)、ファブリックケア(衣料用洗剤)、リビングケア(台所用洗剤)、ビューティケア(ハンドソープや制汗剤)、そして、薬品の5部門から成る。
この中で、近年、存在感を失いつつあった薬品部門に、目を見張る変化があった。
ライオンは日用品大手にあって唯一、解熱鎮痛剤や点眼剤(目薬)など、一般用(OTC)医薬品を持つ。この薬品部門におけるライバルは、花王やプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)といった内外の日用品メーカーではなく、ロート製薬や参天製薬、エスエス製薬といったOTC医薬品メーカーだ。
OTC医薬品市場は、少子高齢化による消費不況や人口減に伴う市場縮小により、昨今、低迷が叫ばれて久しい。ライオンもご多分に漏れず、薬品部門の売上高は13年度まで、右肩下がりを続けていたのだ。
苦境の薬品部門で
救世主となった
二つのプレミアム品
ところが、14年度は、状況が一転した。薬品部門の売上高は382億円で前年度比3.8%増と、過去5年で初めて、前年度を上回り、11年度の水準にまで回復したのだ。
その背景には「量から質へかじを切って投入した二つの“プレミアム”の貢献が大きい」と業界関係者は言う。