しかし、2002年にRPS法が施行され、電力会社に対して一定割合で再生可能エネルギーの導入が義務付けられると、再エネをビジネスにできる見通しが広がり、「最初は儲からないかもしれないが、やっていく価値はある」(大西氏)という判断に至ったのである。2006年には、最初の小水力発電所となる「三峰川第三発電所」(出力260kW)を稼働させた。

知恵を絞って建設・運営費を合理化
「三峰川第三・第四」で培ったノウハウ

丸紅が小水力発電に参入した「三峰川第三・第四発電所」における、発電の流れと仕組み。拡大画像を参照してほしい(丸紅提供、三峰川電力株式会社の企業案内より抜粋)
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 第三発電所の運営は、クリーンエネルギーという言葉を体現するかのように、まさにエコだった。水槽から既存の第一発電所へと続く水圧鉄管を途中で分岐し、第一発電所より上方に新設された第三発電所の発電機に導水してそこで発電を行い、発電後の用水を第一発電所の冷却水として再利用するというものだ。それまで第一発電所の冷却水は、川の下流から40mほどポンプで汲み上げて使っていたため、電気代が嵩んでいたが、水の再利用によってその必要がなくなり、省エネ化を実現することができた。第三発電所の新設で売れる電力が増えることに加え、既存の発電所にかかっていたコストのスリム化も図れるという、一石二鳥の策だった。

 次に手がけた三峰川第四発電所(出力480kW)は、それまで発電後に川に放流していた第一発電所の放流水の一部を取水し、地形の落差を使ってもう一度発電する目的で、2009年2月に第一発電所の下流で稼働した施設だ。このときも、課題となったのは建設コスト。水力発電所は水の量と水を落下させる際の地形の落差によって出力が決まるが、現実問題として、同じ水の量と地形の落差を得られる場所はどこにもない。よって、発電所をつくる際は、その地点で最も効率よく最も多くの水力を利用できるよう、一からオーダーメイドで形やサイズが異なる水力発電機・水車を設置するのが普通だ。ところが、第四発電所についてはオーダーメイドだと総コストが7億円もかかり、予算オーバーになるという試算が出た。

 そこで関係者は発想を転換した。オーダーメイドをやめて汎用品の発電機を6台使うことにし、水量変化に合わせて各々の発電機が動いたり止まったりするように、稼働台数を切り替え制御することにしたのだ。水量が多い季節には並列6台をフル稼働させるが、少ない季節には何台かを休ませる。このコントロールにより、最適化されたオーダーメイドの発電機でなくても、効率的な発電を実現することに成功した。また、取水した水を導水する水圧管も、これまで使っていた鉄管に替え、安価・軽量で一定以上の強度を保てるFRPM管(強化プラスチック製の管)を採用した。FRPM管は熱に弱いため地面に埋設する方法をとったが、そのやり方は冒頭で紹介した花の郷発電所などに踏襲されている。こうしてコストカットを試みた結果、第四発電所は当初の試算から約3割安い4億5000万円ほどで建設することができた。

 三峰川第三、第四発電所の試行錯誤と成功は、その後の小水力発電事業の転機となった。丸紅の取り組みがメディアで取り上げられ、小水力発電に関わる人々の注目を浴び始めたこともあり、同社がチャレンジできるビジネスの幅は広がっていったのだ。

 たとえば、小水力の第三弾として2011年6月に稼働させた長野県茅野市の「蓼科発電所」(出力260kW)は、地域に昔から存在した古い発電所を「リユース」したパターンである。基となったのは、1950年代に地元の蓼科開発農業協同組合が建設した、小斉川の農業用水を発電用水として利用する小水力発電所だった。