赤字が続く世界最大のソーシャルメディアサービス企業のツイッターに、創業者のジャック・ドーシー氏がCEOとして再登板する。だが、待ち受けるのはあまりに高い壁である。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

「成長のスピードには満足していないが、マネタイゼーション(サービスからの収入を得ること)では良い結果が出た。ツイッターは世界を見るのに最高の“窓”にも、最も強力な“マイク”にもなり得るし、近い将来そうしてみせる」

 7月28日、今年買収した、動画中継アプリ、ペリスコープを通じて行われた第2四半期(4~6月)決算発表で、ジャック・ドーシー・ツイッター暫定CEO(10月5日に正式にCEOに就任)はこう宣言した。豊かに蓄えたひげとリラックスしたTシャツ姿で久々に表舞台に帰ってきた創業者の姿に「いいひげだね」「いいぞジャック、行け!」と声援を送るツイートが飛び交った。

 ドーシー氏にとっても、この会見は二重の意味で感慨深いものだったに違いない。2008年に取締役会に解任された後、今年7月に劇的な“CEO復帰”を遂げてから初のお目見え。そして市場予測を大きく上回る好決算となったことだ。第2四半期の売上高は前年同期比の61%もの増加となった。為替の影響を除くと増加率は68%にも跳ね上がった。売上高の90%を占める広告収入が、モバイルなどの新サービスにより伸びたことが理由だという。

度重なる内紛で
ストックオプションが
異常な高止まり

 月間アクティブユーザー3億0400万人を抱え、フェイスブックと並び世界で最大のソーシャルメディアサービス企業として、その存在を知らぬ者は少ないツイッター。だが、フェイスブックと決定的に異なるのが、一度も黒字化したことがない、ということだ。

 14年のツイッターの売上高は14億0300万ドル。当期損失は5億7782万ドルに及ぶ。フェイスブックが124億6600万ドルの売上高に対し、29億4000万ドルの当期利益を上げたのと対照的だ。

 売上高成長率では、10年からの5年間で50倍と、フェイスブック(同期間で約6倍)を大きく上回るツイッターだが、適正な投資の下に利益を出し、それを再投資に回す“普通の企業”のサイクルにはいまだ到達していない。

 例えば、ツイッターの製造原価率(cost of revenue)は、売上高比で14年は32%にも達している。フェイスブックの17%に比べると、売り上げ規模の割に高過ぎるのだ。

 製造原価の中には、データセンターの運営コストやリース費用、サーバの減価償却費、従業員給与に加えて、経営陣へのストックオプション支払い費用が入っている。