消費税の構造の問題点はかねて指摘されているが、インボイス導入には事業者の抵抗が大きい

 付加価値税の税率が高いヨーロッパでは、軽減税率が広く行なわれている。なぜ日本では、同じことができないのか?

 それは、日本の消費税にはインボイスがないためだ。そして、免税や簡易課税という特例が存在するからだ。この機会に、日本の消費税の構造を合理的なものへと改革すべきだ。

政府は軽減税率の財務省案を撤回
新たな仕組みを考えると表明

 政府は、消費税の軽減税率に関する財務省案を撤回し、新たな仕組みを考えることとした。

 この問題に関連して、以下では、つぎの諸点を検討することとする。

(1)ヨーロッパでは、最終段階の税率を軽減税率とすることによって軽減税率を実現している。それはどのような仕組みか?

(2)日本でそれを行なえないのは、なぜか? どうすれば実行できるか?

(3)日本でインボイスを導入できないのはなぜか? インボイスを導入すると事務負担が増えると言われるが、本当か?

(4)インボイスを導入すると、どのようなメリットとデメリットがあるか?

インボイス方式:
ヨーロッパの付加価値税の仕組み

 EU諸国などで導入されている付加価値税は、流通の各段階で、取引のたびに課税する。これによる税の累積を避けるため、前段階で課税された消費税を控除する(「前段階税額控除」。これは、仕入れに含まれている消費税を控除することなので、「仕入税額控除」とも呼ばれる)。

 前段階税額控除は、取引事業者間でやりとりされる「インボイス」によって行なわれる。これは、取引対象である商品ごとに、取引内容、税率、税額、取引金額などの法定事項を記載した書類だ。