中国と台湾のトップ会談が実現
両岸が極秘で進めた“習馬会”
Photo:新華社/アフロ
「我々も公表される直前まで知り得なかった。両岸がそれだけ極秘扱いで準備を進めてきたのが今回の“習馬会”ということだ」
11月7日夜(北京時間)、中国共産党元老に親族を持つ“紅二代”の1人が北京で私にこう語った。
“習馬会”とは習近平・馬英九会談を指す。台湾では通常“馬習会”と称される。
11月7日15時、中華人民共和国が建国された1949年以来、中国と台湾のトップ会談が初めて挙行された。上記の“紅二代”もサプライズを示したように、“中台首脳会談”の開催がオーソライズされたのは直前だった。台湾総統府が11月3日深夜に、中国国務院台湾弁公室主任・張志軍が11月4日午前に公表した。
会場はシンガポールのシャングリラホテル。
1993年4月、中国側の対台湾窓口機関の1つである海峡両岸関係協会と台湾側の対中国窓口機関の1つである海峡交流基金会それぞれのトップである汪道涵・辜振甫両氏が、中台双方初の“ハイレベル民間対話”を行ったのもシンガポールだった。この“汪辜会談”が歴史的契機となり、その後、中台間における多角的な関係構築や交流促進につながっている。2014年2月には、中台事務方トップ会談が初めて挙行され、中国国務院台湾弁公室の張志軍主任と台湾行政院大陸委員会の王郁琦主任委員が南京の地で“合流”した。
「“習馬会”はシンガポールだからこそ開催できた。リー・クアンユーは天国で微笑んでいるに違いない」
冒頭の“紅二代”はこう述べる。
新華社《参考消息》によれば(“鄧小平がリー・クアンユーを通じて蒋経国に送った伝言”、2012年8月15日)、1985年9月20日、中国を訪問中のシンガポール建国の父リー・クアンユーは鄧小平との会談中に台湾問題の解決をめぐって話し合った。その際、鄧からリーに対して“両岸の指導者が面会し、台湾問題の解決をめぐって意見交換できる場を手配していただけないか”という懇願をしたという。当時、中華人民共和国とシンガポールの間では国交は存在しなかった
1990年、中国と国交を結び、台湾と断交してからも、シンガポールは中台双方の狭間で“独自外交”を展開した。台湾行政院長をシンガポールに招待し、中国に強硬的で、“台湾独立”を公に主張した民進党が与党として君臨した2000~2008年の間にも、リー・クアンユーは台湾を二度訪問している。2004年7月、リー・シェンロン首相も実父の路線を継承する形で訪台し、陳水扁総統と公に会談している。2016年1月に開催予定の総統選挙における有力候補でもある蔡英文行政院大陸委員会主任(当時)とも会談している。