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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

「おもちゃ」とバカにしている人は
3Dプリンタ革命の本質を見逃す

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第20回】 2015年11月17日
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 たとえば、ボーイングが買収したマクドネルダグラスにMD80という航空機があります。

 1987年に開発された飛行機で、今でも現役でたくさんの機体が活躍しています。ところが、もともとのメーカーが買収されてしまったこともあり、メンテナンス用のパーツがない。そこで、交換用の部品を3Dプリンタでつくっているのです。実際に、アメリカの国内線などでこの機体に搭乗すると、トイレなどのパーツが3Dプリンタでつくられたものに交換されていることに気がつきます。

 旅客機だけではありません。1987年に開発されたF18戦闘機は、今では100近いパーツが3Dプリンタによって供給されています。さらに、F18の成功事例によって、これから世界各国に導入されるF35戦闘機では、最初から900ほどのパーツが3Dプリンタでつくられることになりました。これなら砂漠の真んなかで壊れても、3Dプリンタがあれば交換パーツをつくれます。

必要な時につくれれば
ものを運ぶ必要がなくなる

 砂漠の真んなかというのは少し極端な例ですが、3Dプリンタでパーツを供給できることには、多くのメリットがあります。まず、在庫を持たなくていい。さらに、必要になったパーツを倉庫や工場から戦場の現場まで運搬する手間とリスクをなくすることができます。運搬中、敵に撃たれる心配もありません。

 ちなみにこの章の冒頭で紹介したロールスロイスでも、3Dプリンタによる航空機エンジンの大型部品の製造を開始しています。

 3Dプリンタは、ものの販売の仕組みを大きく変える可能性もあります。ICTの進展によって、世の中はロングテール化が加速しています。ロングテールによってバリエーションが増えた製品を、完全に在庫して管理するには、大変な手間とコストがかかります。配送費もばかにできません。

 でも、3Dプリンタでいろいろな製品をつくれるようになれば、そんな心配は不要です。

 各家庭に3Dプリンタが普及すれば、メーカーが販売するのは製品ではなく、製品をプリントするためのデータということになるでしょう。

 これはもはや3Dプリンタが引き起こすものづくり革命、いえIoT産業革命と言っても過言ではないでしょう。

(今回の記事は、最新刊からの一部抜粋です)

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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