当初の狙いであった学業優先については、「学業に費やせる時間ができた(7.8%)」と、少数意見とはいえあったようです。また、5、6月に帰国する留学生にとっては、8月からの就職活動にギリギリ間に合ったという声も聞かれました。

 しかし反面で「暑い時期に活動しなければならなかった」や「卒業年次の学業(卒業論文、卒業研究)の妨げになった」という声が50%以上を超えています。さらに「就職活動が長くなった」(46.3%)というという声も挙がっていますが、これは選考が後ろ倒しとなっていても結局は前倒しで選考を進める企業もあり、結果的に大手企業を受けるまで長い期間を就職活動に費やしたという人が少なくないことを示しています。

 また、人によっては、公務員試験・教育実習などと時期が重なり、泣く泣く片方を辞退したという場合もあったでしょう。卒業年次の学業という部分では、文系学生よりも理系学生の方が大変だったという声も挙がっていました。最終的に就活生自身の振り返りとして、「時期変更はマイナスの影響があった」という回答はほぼ8割です。

約65%の企業が「不利になった」
中小企業の内定辞退激増は深刻に

 対して、企業側の意見はどうでしょうか。

 DISCOが行った『2016 年度・新卒採用に関する企業調査-内定動向調査』によると、採用スケジュール繰り下げによる採用活動の影響に関する回答では、「とても有利になった」(0.5%)、「やや有利になった」(2.8%)をあわせても3.3%に過ぎないという結果です。「どちらでもない」を除き、「やや不利になった」(31.3%)、「とても不利になった」(33.3%)など「不利になった」と答えた企業は全体で64.6%に及び、従業員規模が大きくなればなるほど割合が高まっているのが分かります。

  理由として中小企業では、「大手や上場企業などの採用が8月だったために内定辞退者が増えた」など、8月解禁以前に内定を出していた企業の苦しい現状がうかがえる意見が読み取れます。さらに後ろ倒し初年度ということで、採用活動のスケジュール調整に手間がかかり、他社が指針を守るのかどうかという懸念による調整に負担がかかっているという声もありました。

 内定者辞退については中小企業で多く見られた一方、大手企業では応募者の減少という状況が見られました。実際、私自身も8月からの採用選考時、採用コンサルタントとして関係のあった会社では、応募者の減少や無断欠席なども見受けられました。また、8月後半になるにつれ、選考辞退も増えていきました。さらに応募者の中には8月1日には既に内々定を得た企業での1日セミナーが開催されており、他社の選考に参加できなかったという人も存在しました。

 当初の想像通り、経団連未加入企業や外資、IT業界、中小企業を始めとして採用開始日を大きく前倒しして始める企業も多く、なかには経団連加盟企業にもかかわらず、8月以前にフライングで1次、2次選考をしている企業もあるようでした。実際、8月1日時点で内々定を取得している学生が少なくないという事実は、それ以前に選考をしていた大きな証拠ではないでしょうか。

 私自身もある企業のインターン選考会でコンサルタントとして入っていた際、借りていた会場の隣室では某有名企業の「就職面談会」と称する看板が掲げられており、実質的な採用個人面接が行われている場面を見かけています。