独自の企業風土から生まれた
トヨタのQC活動への取り組み

 トヨタのQC活動への取り組みは、他の日本企業に先駆けて早くから行われた。その背景には、トヨタグループの創始者である豊田佐吉翁、トヨタ自動車を創業した豊田喜一郎氏に繋がる「豊田家の精神」があり、それが独特な企業の土壌を生み出していった。

 トヨタ自動車75年史の社史には、トヨタの品質管理の原点として、こう記されている。

「トヨタがQCを導入したのは戦後であるが、淘汰の品質管理・品質保証の歴史はすでに戦前において豊田佐吉の言葉や豊田喜一郎の『監査改良の精神』にその起点を見出すことができる。佐吉は『充分営業的試験をなし、その成績充分にあがらざる間は、決して販売すべきものにあらず(十分な商品テストを行わなければ真価を世に問うてはならない)』と記し、喜一郎は1937年(昭和12年)の創業時に社長直轄の組織として監査改良部を設置した。

 当時は、品質管理という言葉も手法も存在しなかったが『消費者の要望を直接把握し、これを商品に反映する』『製品の品質と業務の運営を監査し、これを改善する』という喜一郎の監査改良の精神はトヨタが創業時から『品質』を『製品の品質』のみならず、『仕事の質』としても捉えていたことを示すものであり、後のTQC(トータル・クオリティ・コントロール)やTQM(トータル・クオリティ・マネジメント)に通じるものと言える」

 こうしてトヨタでは、戦後の1949年(昭和24年)にSQC(統計的品質管理)を導入、1951年(昭和26年)創意くふう、品質管理教育の導入と、品質管理の基盤が形成された。そして、1960年代の高度成長の時代に入るとTQCが導入され、方針管理やQCサークル活動などの仕組みが構築された。

 これにより、トヨタ自動車は1965年(昭和40年)にはデミング賞を受賞している。デミング賞とは、米国の品質管理の専門家のW・エドワーズ・デミング博士の寄付によりスタートしたことから、その名を冠して品質管理の進歩に功績のあった企業および個人に授与されているもので、高度成長期には各企業がデミング賞の栄誉を受けるべく、企業発展の基盤づくりを競っていた。

 特にトヨタグループは品質管理への取り組みを進め、トヨタ自動車に先駆けて1961年にデンソー(当時の日本電装)がデミング賞を受賞している。トヨタ自動車は、1970年(昭和45年)に日本品質管理賞(現在のデミング賞大賞)を受賞し、1970年代から80年代にかけては工販合併により、TQCが販売部門や海外事業体を含めた全社的な活動に拡大された。1990年代のバブル経済崩壊後は、本格的なグローバル化を前にして体質強化の時代となり、TQCを「人と組織の活力ある活動」として浸透させるべく、TQMへの進化が図られた。