口蹄疫に感染した牛。6月2日現在、宮崎県で処分対象となった家畜の数は17万9千頭あまりにのぼる。ブランド牛が存亡の危機に見舞われている。

 口蹄疫の感染拡大に歯止めがかからない。宮崎県内で殺処分の対象となっている牛や豚などの家畜は約17万9千頭(6月2日現在)。被害は過去に例のない広がりを見せている。宮崎牛の有名種牛も処分され、このままではブランド牛が消えてしまうのではないかと、宮崎の種牛をもとに生育している「松阪牛」や「近江牛」の産地でも危機感が広がっている。

 口蹄疫発生の現場でいま何が起きているのか。「追跡!AtoZ」では緊急取材を敢行した。

感染疑いの一報からわずか20日。
爆発的に感染拡大

 口蹄疫をめぐり、最初の異変がおきたのは4月9日だった。ある農家から獣医師のもとに「熱を出し、よだれを垂らしている牛がいる」という連絡が入ったのだ。取材班は、この牛の診察にあたった獣医師の青木淳一さんの単独インタビューを行なった。

 青木さんによると、牛の唇と舌には、3ミリほどの皮が剥がれた部分があったという。

「見た瞬間にどきっとしました。家畜保健所に連絡して今後の対応を尋ねました」

 その後、宮崎県の家畜保健所の担当者が「口蹄疫防疫マニュアル」と共に駆けつけた。マニュアルには注意すべき症状として「口の中に水疱ができる」とあったが、県の検査では、他の牛を含めて水疱は見つからなかった。
「安堵の雰囲気が流れました。良かったね、と」(青木さん)

 青木さんは、その後3日間往診を行ない経過を観察したが、3日目には症状が治まった。

 ところが、最初の異変から4日後の4月13日、状況は一変した。別の牛2頭に、発熱やよだれといった同じ症状が現れたのだ。そして、4月20日。宮崎県が改めて行なった遺伝子検査で、口蹄疫に「陽性」という反応が出た。青木さんはこの結果に耳を疑った。

「ウソだろう、と聞き直しました。症状がこんなに軽い口蹄疫あるとは夢にも思っていませんでした」

 その後、感染拡大は爆発的に広がることになっていく。その引き金となったのが、豚への感染だ。4月28日、宮崎県川南町にある県の畜産施設で、豚への感染が見つかった。豚は牛と較べ、ウイルスを1000倍にも増殖させ、専門家の間で「ウイルスの『増幅器』」とも呼ばれていた。

 初期症状の段階で駆逐することができず、豚にも感染が広がった口蹄疫。感染拡大はどこまで続くのか、関係者の間に不安が広がっている。

感染源から10キロ以内の地域では、ワクチンの接種が義務付けられ、殺処分されるのを待つ状態に。土地不足で処分が進まず、農家の負担は増え続けている。(写真:農家撮影)

土地が足りず、処分が進まない!
農家の負担は増えるばかり

 国と宮崎県では、感染拡大を食い止めるため、感染源から10キロ以内の地域では、ワクチンの接種を行ないながら、最終的にすべての家畜を殺処分し、ウイルスを根絶させたいとしている。口蹄疫のいわば「被災地」とも言える10キロ圏内で何が起きているのだろうか。