2010年4月1日、第一生命は東証1部に上場。渡邉光一郎社長は満面の笑みで鐘を鳴らした。初値は売り出し価格を上回る16万円に

国内2位の第一生命保険は4月1日、相互会社から株式会社へとその器を替え、東証1部に上場した。4大生保としては初めてだ。国内生保市場は少子高齢化から縮小を余儀なくされており、新たな成長戦略を描くのが狙い。ただ従来の日本市場が肥沃だっただけに自ら変革を遂げるのは容易なことではない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

「マーケットの状況にもよるが、優先株で5000億円、普通株で5000億円、合計で1兆円程度のM&Aのための資金を資本市場から調達できる可能性がある。株式会社化して上場することで、われわれはこれだけの経営の自由度を手に入れた」

 第一生命保険の幹部は冷静にそう語った。株式会社化は、「多様な資本調達手段と自由な商品開発を可能にする」(三輪昌彦・ムーディーズ・ジャパンシニアアナリスト)ものだ。資本調達に制限のある相互会社の形態では難しかった、1兆円を超えるような大胆なM&Aを駆使した成長戦略も描ける。対象はアジアを中心とする海外の企業となる可能性が高い。大型M&Aが実現すれば、海外での事業が皆無に等しい日本の生保にとって、初の本格的な海外進出となる。

 2010年4月1日、第一生命は相互会社から株式会社へと会社の組織形態を転換し、同時に東証1部に上場した。初値ベースでの時価総額は1.6兆円、株主数137万1000人という大型の上場だけに、株式市場はお祭りムードで盛り上がった。渡邉光一郎社長は上場時の会見で、上気した顔で「グローバルでの成長により、時価総額で常に世界のトップ10を目指したい」とぶち上げて、新たな成長ステージへと踏み込んだことを印象づけた。

 そもそも第一生命が株式会社への転換と株式上場を果たしたのは、中長期的には少子高齢化が進むことで、保険市場が縮小するのが目に見えているからだ。日本は保険料収入で世界2位の規模だが、業界全体の保有契約高(個人保険)については1996年の約1500兆円をピークとして現在は約40%減少。保険はストックビジネスであり、商品構成も変わっているのですぐに影響は出ないが、中長期的に縮小均衡は避けられない。

 収支の状況をつぶさに見ると、苦しい様子がうかがえる。下図のように、生保の基本的な収益力を示す基礎利益については右肩下がりだ。儲かる商品である死亡保障保険や保有契約高そのものが減少し、世間を騒がせた保険金の不払い問題の改善によるコスト増などもあり、基礎利益の要素の一つである費差益は年々減少。基礎利益の大半を占める危険差益も保有契約高の減少に連動して目減りしている。低金利の恒常化による逆ザヤも解消には数年かかる。