一億総活躍の肝は恒久財源確保
筆者が考える「財源の壁」突破法

 筆者から提案したい。1つ目の歳入の増額は、既存の税体系の改革ではもはや限界がある。そこで、既存の税体系の中でも納税の「痛み」が薄いか、あるいは「痛み」があまり届いていないであろう超富裕層に狙いを定めて、全く新しい「富裕税」(仮称)を新設、厳しく徴税することである。現行の所得階級別の実行税負担割合では、所得税の負担率は年収1億円超の所得層が最も厳しく、これを頂点に超富裕層になればなるほど、いわゆる右肩下がりのカーブを描いて、所得税の負担率が下がっている。この不公正で不平等な所得税の負担率の実態を正して、素人の目にも解かり易く、単純に右肩上がりのカーブを描く累進課税方式に改めることである。

 幸い、国民背番号(マイナンバー)制が導入され、実用の機会を迎えている。超富裕層を中心に、節税の名を借りた大口脱税の捕捉率の向上にも徹底的に取り組むことである。国税庁のある高官によると、これまでは不可能であった超富裕層の収入構造の実態把握が、国民背番号(マイナンバー)制の導入で可能になったため、国税庁の決断1つで「やろうと決めれば、できること。ただ、最終的には政治的決断が必要」ということだ。「大口脱税の捕捉率を厳しく引き上げていけば、消費税の引き上げも不要になる」との説も聞いた。

 なお、年収1億円超の所得層の所得税負担率は28%前後に達しているが、同10億円超の所得層では21%前後へ、同負担率は大幅に下がっている。これは、超富裕層になるにつれて、総所得に占める税率の低い所得の割合が大きくなるためである。税率の低い所得とは、配当所得をはじめ、預貯金・公社債利子などである。

 2つ目の歳出削減についても、提案したい。全国民が納税の「痛み」を公正に分け合い、不要不急な歳出を徹底的に洗い出し、ムダ遣いをなくす努力を重ねていくことは言うまでもないが、一方で超富裕層に対する年金の支給に対して、強制ではなく自発的に「名誉ある辞退のすすめ」を制度化することである。功成り名を遂げた超富裕層が、現在全国民のうちどのくらいの比率で存在するかは不明であるが、お上からの礼を尽くしたお願いとあれば、喜んで返上する篤志家が続出するのではないかと思うのは、筆者の甘い考えであろうか。

 それにしても、日本の租税体系はなぜ、ここまで「弱きを挫き、強きを扶ける」構造で罷り通ってきているのか。偏に政治家の怠慢の誹りを免れない。

「一億総活躍社会」の理念とその方向性に間違いはなく、実現できれば夢のような話であるが、肝心の実現性となると、日本経済の実態があまりにも脆弱で、それをいかに難しくしているか、理解していただけたであろうか。安倍政権はアベノミクスと同様、またもや経済に疎い脆さを晒しているが、皮肉にも「第三の開国」を断行し、外圧に形(なり)振り構わずに依存してでも、一億総活躍社会の実現を最優先に猪突猛進した方が、日本経済を失速や破綻の淵から救い出せるのかもしれない。いずれにしても、このままでは一億総活躍社会の実現は「夢のまた夢」で終わるのは必至である。政府は、この現実を直視すべきである。