世界経済は転換点を越えた

 2016年がスタートしました。今年もよろしくお願いします。今月は2016年の経済環境見通しと、経営戦略の立て方をテーマに、2回にわたってお話します。

小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 まず、2015年を振り返ると、2015年の経済状況は、消費は弱かったものの株価は上昇するなど、ある程度安定していたと言えるでしょう。実体経済自体はそれほど良くはありませんでしたが、それでも低位安定と言えたかもしれません。2016年の今年は良くなることを願いたいところですが、しかし現実には厳しい1年になりそうです。その最大の理由は世界経済が大きな転換点を迎えたところにあります。

 ひとつは、米国の利上げにより世界の主要中央銀行による量的緩和の傾向が変わってしまったことです。量的緩和により、景気や株価が支えされていましたが、米国だけが比較的経済が堅調なために量的緩和に終止符を打ち、昨年暮れに金利を上げ始めました。12月16日に米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が政策金利の引き上げを決めたことで3極同時の量的緩和が終わったのです。

 それにより、経済の状況が不安定な新興国からはすでに資金の引き上げが始まっていますし、円に対しては別ですが、他の通貨に対してはドル高が進んでいます。

 もう一つの大きな転換点は、中国経済の減速が鮮明になったことです。21世紀の世界経済を大きく引っ張ってきたのは、10%成長を続けた中国でしたが、その減速がはっきりしたのです。20世紀なら中国の減速はそれほど大きなインパクトはなかったかもしれませんが、現在世界全体で75兆ドル程度のGDPの中、約10兆ドルを中国は稼いでいますから、その減速のインパクトは、日本はじめ周辺国、さらには資源国に影響を及ぼしています。

 そして、2016年早々、株価が大きく下がりしました。原因は中国経済の減速が止まらず、景気に敏感に反応する中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が景況改善と悪化の分かれ目となる50を下回ったことにありました。それに関連して、上海株が大きく下げ、市場安定化のために導入した「サーキットブレーカー」が逆に市場を混乱させ、その制度を停止せざるをえなくなりました。

 また、中東ではサウジアラビアとイランの対立が年明け早々に激化、今も収まる気配が見えません。原油価格も、中国経済の減速や米国産シェールオイル、産油国の結束力の低下などがあって低迷しており、このことも不安を増長しています。それにプラスして、欧州ではテロや難民問題が、ギリシャ問題をようやく乗り切った病み上がりの経済の足を引っ張っています。

 世界経済は、大きな転換点を迎えているとともに、大きな難問を抱えているのです。日本経済ももちろんその影響を大きく受けます。