人間の周囲には数多くのダニが生息していて、大きさはさまざまだがその多くが肉眼では確認しにくい微小なもの、ということは比較的知られているだろう。ここでは、それら身近なダニのなかから「顔ダニ」と「マダニ」を取り上げ、人体への影響などを改めて考えていきたい。
顔ダニは退治すべき?放置すべき?
そもそもダニとは辞書(大辞泉)によると、ダニ目の節足動物の総称である。体は頭・胸・腹の区別がない楕円形で、ふつう歩脚は四対ある。節足動物マニアでないかぎりグロテスクに感じられるような外観だ。人畜について血を吸うイエダニ、ツツガムシなどのほか、食料品につくコナダニ、ホコリダニ、農作物を加害するハダニなど有害なものが知られているが、無害な種類のほうがはるかに多いという。
人間にもっとも身近なダニのひとつが「顔ダニ(ニキビダニ)」だ。すべての哺乳類の毛包部の分泌線に寄生しているともいわれる。人間は顔面の皮脂腺が発達しているため、結果的に顔に多く生息していて「顔ダニ」と呼ばれるようになった。ニキビダニとの別名はあるものの、ニキビや皮膚疾患の数ある原因のひとつにすぎず、むしろ余計な皮脂を食べて顔面の脂のバランスを保つ効果すらある。
よって、ほとんど誰の顔にも棲んでいる顔ダニは、身近かつ害のないダニに分類してもよさそうだが、もちろん数が増えすぎると害が目立ってくる。食べられる皮脂の量も増えるから乾燥肌になるし、死骸や抜け殻が毛穴につまることが増えニキビの原因となる。増殖を防ぐ一番の方法は洗顔だが、洗顔のしすぎも肌によくないのはご存じのとおり。あのグロテスクな生物が顔に棲んでいると思うと不快ではあるが、特に異常を感じないのなら放置がいちばんだ。