今後さらに新聞、書籍などの情報媒体のデジタル化は進み、コールセンター、店頭、窓口対応などの対人業務の機械化が進むことが予測される。建設現場、農業、水産業などの分野にもIoTやAIは浸透していくだろう。技術は常に、利用者の利便性を高めるために既存の仕事を奪いながら進展してきているといっても過言ではない。

 ここであげたキーテクノロジーの幅広い応用分野への普及は、かつて経験したことのないスピードで進む可能性がある。2016年は、社会基盤、産業構造、経済社会などが、デジタル化の影響を受けて大きく変貌することを体感する重要な節目の年となるだろう。

企業組織に影響を及ぼす
3つのクラウド

 キーテクノロジーではないが、これからの企業組織や働き方に影響を及ぼす3つのクラウドについて述べておきたい。3つのクラウドとは、クラウドコンピューティングとクラウドソーシングおよびクラウドファンディングである(図2)。前者のクラウドは「Cloud(雲)」で、後者2つは「Crowd(群衆)」を意味する。

その仕事は「自前」か「外注」か、<br />または「機械にさせる」のか?

 クラウドコンピューティングは、前述のIoTやAIなどと同様の技術トレンドであるが、すでに普及が進みつつあり、当たり前の選択肢の1つとなってきているため、これからのキーテクノロジとはいえない。クラウドソーシングおよびクラウドファンディングは、テクノロジーではなく業務の遂行形態や資金調達形態である。

 これらは、それぞれ異なる分野の動向であるものの、共通する部分がある。それは、企業の資源所有の考え方を変えたという点である。「持たざる経営」という言葉が1990年代から使われるようになり、工場を所有せずに製造業としての活動を行うファブレスという考え方も一般化している。製造業にとって重要な工場や生産設備という経営資源を所有しないという選択肢が浮上し、それ以外にも在庫を持たない、店舗や販売網を持たないといった経営資源の一部を所有しないで事業を推進することは1つの経営形態として認知されている。

 クラウドコンピューティングの持つ特性は、少ない初期投資で始められ、拡張・縮退が容易であるといったデジタルビジネスが求める要件と極めて高い一致を示しており、今後のビジネス基盤として重要な位置を占めるようになるであろう。企業は、デジタル化する社会において重要性を高めるITという経営資源についても、所有から利用への転換の道を選び始めている。