ドル円相場の様相は一変した。1月29日、日本銀行のマイナス金利サプライズを受け、ドル円は一時121円台に反発した。米利上げ後数カ月間のドル円相場は弱含みで推移すると見込まれ、115~120円水準での攻防を覚悟していた。日銀の政策は相場を支える一助になると一瞬安堵した。
しかし、相場の主エンジンはあくまで米景気。米景気が駄目なら日銀が何をしてもドル円は上がらない。マイナス金利発表後の円安は、米景気低迷のニュースなどによって数日で消えた。市場ではそれまで115円をドル円の上昇基調を保つ下限と見なしていたが、118円、117円とマイナス金利発表時の水準を割り込んだ途端、ムードは暗転した。日銀の政策発動は、相場の分水嶺の水準を引き上げ、相場下落を早める引き金になってしまった。
年初来、メディアでは円安論と円高論を対峙させる企画が多かった。現在は、円高論者が根拠としがちだった米利上げ後のドル安とか、日本の経常黒字増による円高とか、もはやそういう次元の話でもない。米経済減速が鮮明となり、リセッション入りの可能性も出てきた。
当社も今年の米国のGDP成長率予測を2%付近から1.2%へと引き下げ、利上げも年3回から12月1回のみと予想を改定した。市場は世界経済の下振れリスクを警戒し、そのリスクに備えなければならない。