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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

日本のビジネスパーソンたちへ
「サイバー3」から読み解くニッポン躍進の鍵

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第21回】 2016年3月2日
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 太陽電池やスマートフォン(携帯電話)端末など、近年のプロダクトの趨勢を見ても、ICTが日本の弱点であることは明白です。プロダクトが普及する当初、日本はものづくりの技術で世界をリードする。でも、製品がより普及してプログラムやプラットフォーム(=よりICTと関わりの深い)が勝負となるフェーズになると、たちまち覇権を失って凋落してしまいます。

 このことは、サイバー3のサマリー(概要報告書)の中でも「IoTは変革をもたらす力をもった技術です。今後IoTによって、従来の競争基盤が変わり、産業の境界が刷新され、本質的な破壊的企業が次々と誕生してくるでしょう。しかしこれにより将来どのような影響があるのか、(日本においては)官民問わずあまり正しく把握できていないのが現状」と指摘されました。

 IoTはICTの活用形態。ICTを活用するためには、サイバーセキュリティへの理解が不可欠です。つまり、日本凋落の大きな要因はサイバーセキュリティへの理解不足にあるといえます。これはまさに、私が2015年11月に上梓した『IoTは日本企業への警告である』の中でも提示した大切なテーマです。ところが、さまざまな日本企業の方とお話ししていると、サイバーセキュリティについて「よくわからない」「コストがかかる」「なんとなく怖い」といった漠然とした不安を抱えたまま、目を閉じ、耳をふさいでいるのではないかと感じることが少なくありません。

 世の中には「サイバー攻撃を受けた企業」と「サイバー攻撃を受けたことに気が付いていない企業」の二種類しかない、といっていいでしょう。私がさまざまなところで「IoT=Internet of Things」は「IoST=Internet of Secure Things」でなければあり得ないと主張しているように、今後、日本の屋台骨である「ものづくり」の主要なトレンドとなるIoTにおいても、サイバーセキュリティが成否を分ける大きな鍵を握ることになります。

 もちろん、企業の経営者やエグゼクティブが、セキュリティに関する専門的な知識を完璧に学ぶ必要はありません。大切なのは、サイバーセキュリティの「エッセンス」を理解して、企業経営やさまざまなものづくりに活用していくことです。

 サイバーセキュリティのエッセンスとは何なのか。『IoTは日本企業への警告である』の書中で詳しく語っていますが、簡単にいってしまえばインターネットを活用するための基本姿勢のあり方です。インターネットに国境はなく、サイバーセキュリティは世界共通の課題になっています。だからこそ、サイバー3には世界が高い関心を示し、たくさんのキーパーソンがわざわざ沖縄まで足を運んでくれました。今回、サイバーセキュリティに関する国境や組織の形態を超越したカンファレンスを日本が提唱し、日本で開催できたことには、大きな意義があったといえるでしょう。

失敗経験を共有できるネットワークが必要

 ふたつ目のポイントは、サイバーセキュリティにおいて「失敗経験を共有する」ことの大切さです。

 IoTがあらゆるものづくりにとってますます不可欠なテクノロジーとして広がりつつあるのと比例するかのように、インターネットにおけるサイバーセキュリティは今まさにギリギリの状態にあり、インターネット技術そのものがクリティカルな分岐点にきています。セキュリティが崩壊すれば、インターネットそのものを利用できなくなってしまうからです。

 どんなに知恵を絞りコストを掛けてセキュリティを固めても、サイバーアタックを「0」にすることはできません。例外は必ず出現してきます。では、どうすればいいのでしょうか。今回のカンファレンスでも重要なテーマとして議論して得られた結論は「レジリエンスを高めることが大切」ということです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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