ついた「勢い」は急に止められない
「トランプ現象」と「橋下徹ブーム」の共通点
アメリカ大統領選挙の共和党の候補者選びで、ドナルド・トランプ氏の勢いが止まらない。共和党の主流派は何とかしてトランプ氏が候補者となることを阻止したいと考えているようだが、対抗馬の一本化がなかなかできないこともあって、このまま選挙戦が推移すると、トランプ氏が共和党の候補者になることは十分あり得る。
さらに、民主党の本命候補者であるヒラリー・クリントン氏と争う本選挙でも、クリントン氏に失言の一つもあれば、「トランプ大統領」が実現する可能性が無いとは言えない状況になってきた。
選挙で指導者を選ぶ民主主義の仕組みにあっては、知名度と支持を掛け算した「(プラスの)人気」の力は良くも悪くも圧倒的であり、しばしばその勢いはコントロール不能となる。もちろん、人気の勢いを、特定の人やグループが恣意的にコントロールできないことが民主主義の長所でもあり、必要条件でもあるので、これを否定する立場が正しいわけでもない。今回の「トランプ現象」的なブームは、大衆がおおむね自由な選挙によって意思決定する民主主義国では、いつ、どこで起きても、不思議ではない。
そう考えていたら、近年の日本にも似たようなブームがあったことに気づいた。ご本人の言によると現在は政治を引退されている橋下徹氏が、大阪都構想を掲げ大阪の知事、市長となって、日本維新の会による国政進出を目指す一連の時期に巻き起こした「橋下徹ブーム」(もっといいネーミングがあれば、どなたかご教示いただきたい)である。これは、「トランプ現象」とかなり似た面があった。
あらかじめ申し上げておくが、本稿で筆者は、トランプ氏、橋下氏、いずれについても批判したり、貶めたりしたいわけではない。特に、橋下氏に関しては、氏が政治家時代に掲げた、大阪都構想を含む多くの政策や方向性に対して、筆者は賛成であった。
本稿では、政策論ではなく、政治現象として、「トランプ現象」と「橋下徹ブーム」を比較してみたい。両者を比較することで、日本の課題が分かるかもしれないし、トランプ氏の今後の注目点が分かるかもしれない、と思うのである。