経営学の研究分野の一つに、変革のマネジメント(change process management)がある。この領域の研究は、経営戦略や人的資源管理などの領域とともに、数多く蓄積されている。数多くの研究が行われ、たくさんの書籍が出版されるということは、すこし皮肉な見方をするなら、いまだ、決定的な解決案が見出されていないということだ。戦略を立案し成功に導くこと、そして、人材を育成し適材適所に配置することが難しいように、変革を成功に導くことも難しい。
さて、変革のマネジメントに関する研究から分かっていることは、以下の3つである。
(1)変革は、解凍(unfreeze)、変化(change)、再凍結(refreeze)というプロセスを経る(現状からの脱却を目指して行動を開始し、よりよい姿を求めて変革活動を展開し、いずれかの時点でその取り組みに一応の決着をつける、と言い換えてもよい)。
(2)変革は、上記のどの段階でも挫折する危険性に直面している、だから、
(3)変革は本当に難しい
研究成果としてこれくらいのことしか分かっていないのかと失望されるかもしれないが、それほどに変革は難しいのである。もちろん、変革を忌避する人間の心理や抵抗するときの言動や行動には、どのようなものがあるかは解明されている。また、今回少し説明するが、変革が挫折する構造も既知である。もし、これらの研究成果に興味があるなら、経営学者に何を読めばよいかを尋ねればよいだろう。
経営学者の知り合いがいないのであれば、ぜひとも友人の一人としてそのような人物を知っておいた方がよい。友人でなくても、研修講師、部下や上司が通っているビジネススクールの教授、blogやtwitterで情報発信している学者など、身近に経営学者はいるものである。
しかし、経営の実践の場で必要な知識、つまり、「どのようにすれば変革を成功に導くことができるのか」という問いに対する処方箋は存在しない。ただ、失敗から学ぶことはたくさんある。以下では、そのいくつかを紹介しよう。