音響ブランド「テクニクス」を代表する製品だったターンテーブル(レコードプレーヤー)の復活を発表した、パナソニック。音楽市場が縮小する中で、超高級路線から商品群の拡大によるブランド再興にかじを切ったその戦略は、今後市場にどんな反応をもたらすか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
「SL-1200をぜひ復活させよう」──。2014年秋、イスラエル人のクラブDJによる呼び掛けで、パナソニックの元にターンテーブル(レコードプレーヤー)の製造再開を求める約2万5000人分もの署名が届いた。
ドイツ・ベルリン市内で開催される国際家電見本市「IFA」で、音響ブランド「テクニクス」の復活を、大々的に発表した直後のことだ。
全社での業績悪化のあおりを受けて、10年にターンテーブルの製造を休止して以降も復活を望む声が強かった中で、パナソニックはそのちょうど1年後となる今年9月、同じIFAの会場で、16年度の製品投入に向けて開発を再開したことを発表した。
SL-1200シリーズは、レコード全盛期の1972年に製造を開始した。
79年に、回転速度を微調整するピッチコントロールをスライド式に変えたことや、その動作の安定性が受け、DJの間で一気に利用が広がった。
それから07年まで35年にわたって、合計で10機種を投入しており、アナログターンテーブルとして他社を寄せ付けず、長年不動の地位を得てきた製品だ。
新製品の開発に当たっては、かつてターンテーブルを生産していた福島県の生産拠点で、残っている金型のチェックをはじめ、体制整備に向けた調査を3カ月かけて実施し、今年2月に正式にゴーサインが出たという。
現在、市場で流通するターンテーブルは中国製のものが多く見受けられ、モーター制御の技術進化が10年以降ほとんど止まったままだったことも、開発陣の背中を押した。
新製品では、音質を劣化させる回転のむらや微小な振動を徹底して抑えるため、ターンテーブルの心臓部となるダイレクトドライブ式のモーターを一から作り直し、従来に比べ直径を2倍近くまで大きくしており、「名機」の復活に向けて、自然と開発に力が入っているようだ。