トランプ氏を支持するのはブルーカラー白人層で、サンダース氏を支持するのは高学歴若年白人層であると言われるが、サンダース氏の場合、同氏の掲げる理念的なリベラリズムが現状の不満の強さを示していると見ることができる。いずれにせよ両者とも、現実的な政策を掲げるというよりポピュリズム的な選挙戦を行っていると言うことはできよう。

拡大する所得格差と政府への不信
高まる“アウトサイダー”への期待

 ではトランプ現象の背景を織りなしている、アメリカ人が持つ怒りや不満は何なのだろうか。

 従来、大統領選挙の決定的要因は経済、なかんずく失業率の高さであると言われ続けてきた。現在、失業率は2009年の10%から2015年の5%と、米国では極めて低い水準へと大幅に改善しており、数字上は失業が米国人の怒りや不満の要因とは考えがたい。ところが近年所得の不均衡が拡大し、労働者レベルの生活水準が停滞している。

 FRBの発表によれば、2013年までの過去3年で上位10%の所得区分の人々の所得は10%向上しているが、下位20%の所得区分の人々の所得は8%下降している。これが大衆の不満の最大の要因であると言われることが多い。所得格差拡大の原因を移民や外国の通貨・貿易政策に求めて批判を展開するトランプ氏や、ウォール街を非難し所得再配分政策を掲げるサンダース氏が喝采される理由の一つなのだろう。

 アメリカ人の怒りの要因として次に挙げられるのは、いわゆる「ワシントン・インサイダー」に対する強い嫌悪感である。これは裏返せばアウトサイダーに対する期待となる。米国の数年前のテレビドラマ「ハウス・オブ・カード」が高い視聴率を上げたが、まさにここで描かれているのが、ありとあらゆる権謀術数を使い、殺人まで犯して下院院内幹事から大統領に登り詰める男の物語であった。米国人がワシントンを見る目はこのドラマに象徴されている。

 ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、共和党支持者の89%、民主党支持者の72%が政府を信用しないとし、ギャラップ社の調査によれば60%のアメリカ人は政府が権力を持ちすぎていると感じている。

 現にこれまでの大統領選挙でも、実は多くのアウトサイダーが結果的に大統領に当選してきた。ジョージア州知事であったカーター大統領、カリフォルニア州知事であったレーガン大統領、アーカンソー州知事であったクリントン大統領、テキサス州知事であったジョージ・W・ブッシュ大統領など、近年はむしろインサイダーよりアウトサイダーの方が多い。