DIAMOND CFO FORUM

グローバル・キャッシュ・マネジメント3.0
グローバル経営最適化の絶対条件【後篇】

山岡正房・EYアドバイザリー ディレクター
堀 雄介・EYアドバイザリー マネージャー

グローバル先進企業との
差を取り戻せ

 GCMの高度化は今後グローバル・コンペティターとの競争に打ち勝つために避けて通れない課題である。それに気づいていないCEOがいれば、GCM高度化がCEOアジェンダの一つであることを理解させるのはCFOの仕事である。GCMがどのような価値を生むのか、そしてそれによって経営がどう変わるのかを、端的かつ具体的に伝える必要がある。

 仮に筆者がCFOの職にあり、GCMで会社はどう変わるのかとCEOから聞かれたら、「確度の高い地図を手に、企業価値最大化に向けた青写真を描き、意思決定を行えるようになる」と説明する。CEOはこれまで自分が見ていた地図(のようなもの)はいったい何だったのかと驚くかもしれないが、その危うさに気づけば二度と元の状態には戻りたくないと考えるはずである。

 その際、忘れてならないのが組織学習の観点である。日本でERPが広がり始めた1990年代後半のことを思い出してみていただきたい。システム導入が完了しても運用に手こずり、しばらくの間はむしろ業務効率が下がるという苦い経験をした企業も少なくなかったはずである。そうした経験を経て、いまや多くの企業がERPによる経営管理の高度化を当然のことと受け止めている。つまり、組織学習を積み重ねてシステムなどの新しい仕組みを真の意味で活用できるようになるのに10年という時間を要したといえる。

 GCMも同じである。仕組みを導入するだけで、一朝一夕に戦略的活用が実現するわけではない。言うまでもなく一足飛びに3.0から始められるものではなく、1.0の効率化、2.0のリスク管理強化と、段階を踏んで高度化させていく必要がある。

 なお、段階的な高度化のためには、これまでのように問題事象に対して個別の施策を打つアプローチでは限界があることも意識しなければならない。

 まずは自社グループのGCMのあるべき姿を定義し、その実現に向けたロードマップを描く。そのうえで障壁となる課題を洗い出し、その対応策を検討する。必要な対応策は、CMS等のシステム導入だけでなく、グループ内の本社/個社の責任・役割分担の見直し、グループ財務ポリシーや個社規程の改訂、オペレーションの標準化や集約化、社内の財務リテラシーの向上や財務人材の育成など多岐にわたるだろう。

 これらのタスクの実行計画を策定し、関係者を巻き込みながら、変革を推進していく。日本企業の財務部門は、こうしたプロジェクト型の取り組みに、不慣れなケースも多いのではなかろうか。

 しかしながら、グローバル・コンペティターが先行している現実から目を逸らすことはできない。日本企業もGCMの高度化を重要な経営テーマとしてとらえ、CFO主導の下でプロジェクトを組成し、組織学習にかかる時間をできる限り短縮する努力をいまから始める必要がある。そうしなければ、グローバル先進企業に追いつくことはますます難しくなってしまうであろう。(終)

(構成・まとめ/相澤 摂)

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「トップ・マネジメントの教科書」CEOとCFO その新しい関係

グローバル経済の本格化によって、歴戦のビジネスパーソンの経験と勘は裏切られる可能性が高まった。トップマネジメントは、リスクを洗い出し、測定し、定量化し、それを踏まえて経営戦略を説明できなければいけない。その際、CEOはCFOの力を借りずしては考えられない。CFOには経営陣の中で論理的な判断のよりどころとなり、CEOを補完すると同時に、戦略志向やビジネスリテラシーも求められている。新しい時代のCEOとCFOの関係はどうあるべきかを求め、取材した。

「「トップ・マネジメントの教科書」CEOとCFO その新しい関係」

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