「ハイハイ」は、なぜ大切なのか?

なぜ、「ハイハイ」させずに<br />歩かせるのは、NGなのか?久保田 競
(Kisou Kubota)
1932年生まれ。医学博士、京都大学名誉教授。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。『ランニングと脳』『天才脳をつくる0歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』など著書多数。

 赤ちゃんの最初の移動は「ハイハイ」です。
 赤ちゃんは、好きな方向に身体を向け、自分の四肢を使って移動します。

 生活様式の変化と親の身長が高くなり、赤ちゃんを抱くと重くて手が疲れる、肩が凝るといって、赤ちゃんの首がすわると立てて抱き、赤ちゃんの足裏をお母さんの太ももや、股の間の床につけて抱くお母さんが多くなりました。

 早くからこの抱き方をすると、赤ちゃんは不安定ながら膝を伸ばし、棒立ちした状態で、少しの間、体重の一部を支えるようになります。
 4~5ヵ月もすると、すわる姿勢も足をピンと伸ばします。
 ただ、この“ピンピン足タイプ”のお子さんは、困ったことに、ハイハイをしないで立ち、歩きだしてしまいます。二足歩行ができるまで、赤ちゃんは身体の動きの基礎を身につけなくてはなりません。

 そのために、ハイハイは、大事な行動です。
 まず、お母さんに抱かれる、寝かされる、といったことから、赤ちゃんはいろいろなことを覚えていきます。

 待たされるままの状態に抵抗しながら、筋肉をきたえ、お母さんの働きかけに応じていきます。

 寝返りをしたり、すわったりするのは、ごく自然な成育過程に沿って発達しますが、すわりだすころからは、親の与える環境によってパターンを変え、行動を覚えていきます。

特に、ハイハイをしないでいきなり立ち上がり、歩かせることは禁物です。
 赤ちゃんの行動には、飛び級はありません。自力で目的地に近づくには、単に筋肉がきたえられたり、行動パターンを覚えたりするだけでできるものではないのです。

 ここでは、身体の動きに対応して、視線、焦点を微妙に合わせ、焦点距離を測りながら動くという、非常に高度な脳の働きができなくてはならないのです。

「這えば立て、立てば歩めの親心」と言われるように、日本的伝統育児の中でハイハイは非常に大事なので、おろそかにしてはいけません。