安倍首相は、G7サミットの後、来年4月に予定されていた消費税増税の延期を表明すると共に、一部で囁かれていた衆参同日選を否定した。これにより、安倍政権は、6月22日に公示され、7月10日に投開票される参議院選挙で国民の信を問うことになる。そこで、これまでの安倍政権の経済政策に的を絞り、その成果と課題を考えてみたい。
幾つかの大きな変遷を経ている
安倍政権の経済政策
第二次安倍内閣は2012年12月に発足した。それから約3年半、安倍政権の経済政策は幾つかの大きな変遷を経て今に至っている。まずはそれをおさらいしておきたい。
◆表1:アベノミクス推移
表1は、政権発足以来の金融・財政・成長戦略を大くくりにまとめたものだ。安倍首相は、いわゆる「3本の矢」として「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」を掲げ、デフレ脱却を目指すとしていた。
そこで、発足早々の13年1月に「日本経済再生に向けた緊急経済対策」として約20兆円の財政出動を決め、13年4月には、就任早々の黒田総裁の下で日銀がいわゆる「異次元緩和」に乗り出した。一方、初めに打ち出された成長戦略は13年6月に発表された「日本再興戦略」であった。
これらのうち、財政出動と量的緩和はインパクトが大きく、13年前半のGDPを押し上げ(図表1)、外国為替相場は政権発足前の80円台から徐々に円安に向かい、日銀の量的緩和後には一気に1ドル=100円を突破する(図3)。14年4月からの消費税の3%引き上げに備えて政府は様々な経済対策を打つが、13年12月には再び19兆円近い財政出動を行っている。
◆図表1:実質GDP推移
◆図表2:円相場と株式市場
消費税増税前の駆け込み需要とこの経済対策が相俟って、13年末から14年3月までの個人消費、そしてGDPは大きく伸びたが、14年4月以降、その反動減が発生しマイナス成長に陥る(図表1・2)。それに対し、公表以来今一つ評判が悪かった「日本再興戦略」の改訂版として「日本再興戦略2014」が14年6月に公表され、コーポレートガバナンス改革や公的・準公的資金の活用戦略などが織り込まれた。
そして14年10月には日銀が国債買い入れ額を増額するなどの「サプライズ緩和」に踏み切り、外国為替市場では、翌15年、一気に1ドル=120円まで円安が進んだ(図表2)。それから間もなく安倍首相は15年10月に予定されていた消費税増税を17年4月まで延期するとし、それについて国民に信を問うとして衆議院の解散・総選挙を行った。