ダニエル・ゴールマンは、IQ(知能指数)重視の伝統に疑問を呈し、脳の働きの体系的研究をEI(Emotional Intelligence)、すなわち「心の知性」の概念として確立し普及させた人物として広く功績を認められている。
ゴールマンは『ビジネスEQ・感情コンピテンスを仕事に生かす』(Working with Emotional Intelligence)で、EIを、自分と他人の感情を認識し、自分をモチベートし、自分の感情を自己の内面においても人間関係においてもコントロールする能力と定義した。
人生と業績
ゴールマンは1946年生まれで、ハーバード大学にて心理学の博士号を取得し、同大学で教鞭も執った。ベストセラーになった著書『EQ・こころの知能指数』(Emotional Intelligence)は1995年に発表され、1998年にはこれに続けて『ビジネスEQ・感情コンピテンスを仕事に生かす』を刊行した(訳注:日本では邦題に使われた「EQ」という用語で知られるが、正しくはEIである)。
ゴールマンはニューヨークタイムズ紙に行動心理学に関するコラムを頻繁に掲載し、最近ではマサチューセッツ州サドベリーでEIに関する研修や評価を行なう、ヘイコンサルティンググループ系列のエモーショナルインテリジェンスサービス社の最高責任者を務めている。ゴールマンはまた、ラトガーズ大学に設立されている「組織でのEIについての研究コンソーシアム」の共同会長をも務めている。
ゴールマンがEIに興味を持ったのは、IQの高い人が必ずしも人生で成功を収めているわけではないと気づいたからだった。
『EQ・こころの知能指数』では、学校の成績は素晴らしいのだが社会生活や会社生活においてうまくいっていない多くの人の例を挙げている。また反対に学業成績は芳しくなかったり普通であっても、人生や仕事の面では大成功を収めている人々の例も挙げている。ゴールマンはビジネスの才を「こころの知能指数」と関連づけた。後著『ビジネスEQ・感情コンピテンスを仕事に生かす』では、25種類の感情コンピテンス、すなわち目に見える行動様式を定義し、いかにEIの高さが成否を決定するかを論じた。