パワハラ、セクハラ、マタハラに代表される職場のハラスメント。管理職に昇進した際などに、研修を受けた人も少なくないだろう。そんななか、特に男性が無視できない“新たなハラスメント”が人事部・総務部を悩ませているのをご存じだろうか。それが、ニオイによるハラスメント「スメルハラスメント(スメハラ)」だ。
女性からのクレームがほぼ100%という職場のスメハラ。その実態と対処法について、自身も人事部などから相談を多数受けるという、職場のハラスメント防止研修を行うヒューマン・クオリティーの樋口ユミ社長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 林恭子)
パワハラ、セクハラだけじゃない!
“グレーゾーン”のハラスメントが続々
――今、ハラスメントに関する研修を受ける企業がとても増えています。ハラスメントに関する意識が高まったのは、どういった背景からでしょうか。
最初の大きなきっかけは、2007年の男女雇用機会均等法改正で、事業主のセクハラ対策が努力義務から「措置義務」になったことです。ほぼ同時期の2006年に起きた巨額の損害賠償請求で注目された北米トヨタ自動車セクハラ訴訟事件があり、これが決定打となって「ハラスメントは会社のリスク」という認識が持たれるようになりました。
またその後、厚生労働省に年間1万件というセクハラ相談が寄せられるようになり、2014年の同法改正で「セクシュアルハラスメント指針の改正」が盛り込まれ、積極的に取り組む企業が増えています。
パワハラについては、2012年3月に厚生労働省が「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を取りまとめ、それがパワハラ対策の決定打となりました。また、2011年末から労災認定の基準が変更され、うつ病など精神障害の認定基準が分かりやすくなりました。その頃から実際に嫌な思いをした社員が外に訴え出たり、人事に相談する件数も増えてきたようです。
私自身も2011年以降、「どう対処すればいいのかわからない」と人事の方から相談を多く受けるようになりました。会社では、社員が人事部に相談する流れが自然になってきたと考えてよいでしょう。今までは自分のなかで我慢してきた方が多かったと思いますが、様々な法改正や、社内の内部通報制度ができたことも受け、「(ハラスメントを受けていることを)言っていいんだ」という空気が醸成されてきたと考えています。