2010年以降に本格化した欧州債務危機により、ギリシャ、イタリア、スペインなどでは、EU主導で厳しい緊縮財政を強いられ、これと平行して経済が低迷し、高い失業率が継続している。このため2012年から14年にかけこれらの財政危機国を中心に各国で相次いでEU評価が急落した。2015年にはいると欧州債務危機への対策が進み各国でEU評価は、一時、回復したが、同年には、今度は、シリア・イラク難民問題が深刻化し、100万人以上の難民・移民が押し寄せ、それに対してEUが有効な対策を打ち出せず混乱したため2016年には再びEU評価が各国で軒並み低下している。

 2004年以降の各国のEU評価の推移を見ると、このように、欧州債務危機や難民・移民問題が深刻化するたびに評価の下ブレが起っているが、長期的な傾向としても全体にEU評価の低下傾向が認められる。シリア・イラク難民問題が一段落した後にEU好感度が回復したとしても、またその後、新たな難民・移民問題が襲いかかったり、いずれかの国の財政状況が悪化したり、EUが管轄する問題でいずれかの域内住民の不満が高まったりしたら、今度は、EUを肯定的に捉える見方自体が萎えてしまうかもしれない。EU内で異物を排除して純化を進めるのか、緩やかな結合で長い目の統合を進めるのか、何らかの大改革が実施されないと、やはり長い目で見ると、今回の英国のEU離脱が「終わりのはじまり」となる可能性は排除できないだろう。

移民問題は英国で特に大きな問題なのか?

 英国民がEU離脱を選択した重要な背景として、移民問題の深刻化が挙げられる。EUの他国と比較して英国の移民問題がそれほど大きな問題なのかを、最後に、確認しておこう。

 わが国には外国人統計はあっても移民統計が作成されていないが、かねてより移民問題が深刻となっているEUでは移民統計がEUの統計機関であるEurostatによって作成されている。ここでいう移民とは、外国生まれの人口、すなわち、自国籍、自国の市民権を有するとしても、移住してきた外国生まれの者全体を指す。EU諸国では移民人口比率が軒並み10%台となっているが、わが国では、国立社会保障・人口問題研究所の人口移動調査(サンプル調査)によれば外国生まれの人口比率は1.1%である(2006年調査、2011年調査とも同じ値)。